これだけは実物を見ておきたい九州の代表的装飾古墳・横穴墓・石室(4~6世紀)
キーポイントは豊富な凝灰岩だ。 
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九州装飾古墳地図







* 福岡県
・うきは市
1 塚花塚古墳

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 巨大な石室と幾何学彩色装飾を併せ持つ装飾古墳。前室入口のガラス窓より覗き見る。赤と緑を用いて二段蕨手文(二段はここのみ)、同心円文、小型ゆぎ、連続三角文が奥壁に描かれているが、褪色が進んで何とか見える程度。雄大な石室と微かに残る彩色の両方が売り。

2 重定古墳 しげさだ

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 前方後円墳だが変形著しい。塚花塚を凌駕し、日本有数の長巨大な石室、石材構造と彩色装飾を併せ持つ装飾古墳だが装飾は全く観察できない。羨道入口よりガラス窓越しに石室内部が覗けるだけだが、その雄大さは一見の価値あり。奥壁は窓のなんと17mも先。

3 楠名古墳 くすみょう

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 重定古墳に隣接し、特異で巨大な石室はこれも日本有数規模、装飾はないが、そのために入室して内部を詳細に堪能できるのが売り。石室、石材の巨大さも注目だが、特異なその石室構造も必見、左右非対称の巨大な前室と遥かに規模の小さい奥室は他に類を見ない。九州式横穴式石室構造の一例として重要

4 ◎日岡古墳 ひのおか 
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案内付きなのでここでは時間制約受ける
 前方後円墳、筑後地域彩色壁画のルーツと言われる極彩色の壁画で日本を代表する装飾古墳の一つ。割石積のコンパクトな古式横穴石室内全面に巨大な同心円文を初めとして、隙間無くビッシリと描きこまれた三角文、蕨手文、武器、舟、馬と豊富な図柄と四色(赤、青、白、緑)の多色彩色は見逃せない。保存の良い彩色壁画としては珍しくガラスを経ずに観察可能であるが、落下した天井石の穴から見下ろす形で角度が良くないのだけが少し残念。諸星大二郎の「暗黒神話」にも登場。

5 月岡古墳 つきのおか
 日ノ岡に隣接する非装飾の前方後円墳、日ノ岡が九州の薫りを強く漂わせるのに対し、隣り合うこの古墳は対照的に中央大和の影響を強く感じる巨大な長持型石棺を有する。それ以外の豊富な副葬品は離れた吉井の資料館に展示してある。

6 ◎珍敷塚古墳

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 日ノ岡で始まった筑後彩色壁画の究極の進化形といえる日本を代表する装飾古墳。具象文に中心を移した叙事詩的壁画はエジプト墓風の趣を醸し出す。赤青の二色に加え、キャンバスとしての石面自体の色も配色として利用するしたたかな技法、大陸画題のヒキガエルや神話にある天の鳥船、雄大な蕨手文等の巧妙な配置は、日本最初の抽象画家誕生の証拠か?どうやらオレンジ色も用いられていることに最近気付いた。石室の破壊は進んでおり、壁画のある奥壁と側壁が四角いカプセルに入れられて間近でのガラス越し観察となるので、臨場感は高い。

・久留米市
7 下馬場古墳

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 日ノ岡古墳の系譜を引き継いだ幾何学文様を主体とする装飾古墳、赤青茶の三色で描かれた同心円文と三角文主体の文様群の中にポツンと残された大型の船やゆぎがアクセントとなる。彩色の保存は中庸だが、彩色系装飾古墳としては極めて珍しく、石室の内部まで立ち入り禁止なく入ることが可能で目と鼻の先で装飾壁面を観察できる稀有な古墳。九州における典型的な複室横穴式石室の観察にも適している。ただし、一日目に玖珠鬼塚古墳を見て来られるのであれば、ここはパスしてよいと思われます。

・筑紫野市
8 五郎山古墳と五郎山古墳館

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 日ノ岡古墳と対極に位置し、赤緑黒の三色で豊富な具象形装飾文様の極致と言える構成でこれも日本を代表する装飾古墳。現物は装飾壁面の遥か遠く、石室入口から壁画一部分のガラス越し観察となってしまうのは残念。しかし、全国で最も良く設計された隣接古墳館には、詳細な解説ビデオと石室全体を完璧に再現したレプリカが完備されており、こちらだけの見学で十分堪能できる。統一性無く見えても、実は全体でモガリの儀式を再現したと言われる。また、珍敷塚の構図をコピーしたと言われる文様配置、更に東北装飾横穴とポーズをほとんど同じとする人物像等、興味は尽きないがコースから離れており時間を少しロスしそうなのが懸念。同心円、ユギ、弓、鞆、大型船、旗指物を付けた騎馬人物、モガリ宮と思われる建物、矢の刺さる獣、鹿、飛鳥、男女の区別ある人物像等、文様の豊富さは随一。

・八女市
9 岩戸山古墳と資料館

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 言わずと知れた筑紫の君「磐井」の墳墓とされている九州最大級の前方後円墳、同時代の大王墓である摂津の今城塚古墳に負けない規模の大きさを見てもらえるでしょう。周溝、周堤を美しく残し、その外側に風土記記載通りに残る別区の存在が選定の決め手となったと言われます。隣接の資料館では、近年発見された保存の良い鶴見山古墳石人を含め、沢山の石人石馬を見学可能です。

・広川町
10 石人山古墳と広川古墳館

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 岩戸山に次ぐ規模の前方後円墳丘と彩色の残る武装石人一体、そして美しい同心円文、直弧文浮彫が施された大型の横口式家形石棺が見どころの古墳です。隣接する広川古墳館には、近くの弘化谷古墳に据えられていた肥後型石屋形のレプリカがあり肥後の影響の濃いゆぎ、三角文、同心円文、双脚輪状文等の復元壁画を観察可能です。

・宮若市
11 竹原古墳

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 珍敷塚古墳と並び、大陸系画題を連想する叙事詩的壁画の双璧と言える。その保存の良好さでも他の追随を許さない日本を代表する彩色装飾古墳です。黒と赤の二色で描かれたサシバ、竜、馬を引く武人、舟、波、鳳凰等の文様は、大和の壁画古墳と同じ四神が描かれているとも、竜と雌馬を交配させて駿馬を得る竜媒伝説を表わしているともいわれる謎の多い壁画である。
 残念ながら、羨門入口のガラス窓越しの観察になるが、十分堪能することは可能である。
 他の古墳から極めて離れた場所にあるため、探訪するために時間を浪費するのが難点。

* 熊本県
・玉名市
12 ◎石貫穴観音横穴

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 日本を代表する装飾横穴。飾り縁の円文彩色(赤白二色)、ゴンドラ船状に浮き彫る屍床、複雑な構造の石屋形、そして築造当時のものか物議を醸す千手観音像と五基のみの小規模横穴群にしては満載の装飾は必見でしょう。二号は九州で最も複雑な構造を持っており、浮彫観音像により神社の本殿として丁重に祀られています。

13 石貫ナギノ横穴
 これも日本を代表する彩色、幾何学文様系装飾横穴。穴観音横穴のすぐ近くにあるので時間があれば寄ることもできるでしょう。45基の大規模横穴群で、有名な6、7、8号では三重の美しい飾り縁に刻まれた幾何学線刻とそれを塗り分けた彩色(赤、一部白)、内部では幾何学線刻と太刀の浮彫、家形の石屋形構造等を堪能できましょう。
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・山鹿市
14 ◎長岩横穴群

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 諸星大二郎の「暗黒神話」に登場する日本を代表する具象浮彫系装飾横穴、108、109号横穴では外壁に刻まれた深く巨大な楯、ゆぎ、立ちふさがる人物の浮彫を観察できます。

15 岩原横穴群
 長岩横穴の隣にあるのでセットで見学も可能です。装飾内容は豊富でありませんが、14号の屍床に、舟葬にまつわる「櫓べそ」と思われる二個の突起が浮彫されているのが稀有です。

16 鍋田横穴
 これも日本を代表する具象浮彫系装飾横穴、7、8、12、14、27号が有名、矢をつがえた弓、楯、剣、立ちふさがる人物、ゆぎ、鞆、馬、小刀、等(一部赤の塗りつぶし顔料が残る)豊富な文様が壁に浮彫されているが、熊本県装飾古墳館に最も有名な27号のレプリカあり。

17 チブサン古墳

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 前方後円墳、典型的肥後型複室石室、石屋形(横口式家型石棺?)、極彩色(赤白黒三色)の幾何学文様(連続菱型文、連続三角文、円文)と三本角の冠を被る特異な人物を主体とした日本を代表する前期彩色系装飾古墳。笑う顔の様な中央の文様は強烈なインパクトを持つ。玄室入口の小さなガラス窓からの観察になるので有名な人物像が見難い。装飾古墳館に精巧なレプリカあり。

18 ◎熊本県装飾古墳館
 熊本県最大級の前方後円墳を持つ岩原古墳群の傍らに築かれた日本で最初に築かれた装飾古墳をテーマとした博物館であり、今でもこの分野では日本一の規模を誇る。更に日本を代表する建築家「安藤忠雄」の設計も必見。熊本県を代表するほとんどの装飾古墳と唯一の特別史跡王塚古墳(双脚輪状文はここでの観察がベストか)の精巧なレプリカが整備されているので必見である。井寺、千金甲、鴨籠、永安寺東、弁慶が穴、チブサン、大坊、広浦石棺、大鼠蔵石棺、小田良、臼塚石人、鍋田27号、大村11号、桂川王塚完備。またすぐ近くには双脚輪状文の描かれた石屋形を持つ横山古墳が移築されているが、褪色が進んでいる。

・人吉市
19 大村横穴群

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 鍋田横穴と双璧をなす具象浮彫系装飾横穴群、約十基の横穴外壁にこれまた多数のゆぎ、楯、連続三角文、馬群、鞆、そして十六菊花文と見なせる浮彫装飾が見事である。
 人吉駅のすぐ背後立地で便利ですが、十年近く前に大崩壊しかかり、大規模修理で生まれ変わりました。しかしその後、横穴直前への立ち入りが建前上禁止されています。
 ご存じのとおり、芝斜面をよじ登れば直下に近づくことはできますが、駅から丸見えの目立つ場所なので、大人数での実施に抵抗感じる場合あるかも。斜面のよじ登りがマニアっぽくて敬遠されるのなら崖下の展望所から双眼鏡等で堪能することは可能ですが、臨場感は劣ります。
 代表的な11号浮彫は熊本県装飾古墳館にレプリカがありますので、そこで済ますことも良いでしょうが、例の菊花文は14号です。人吉盆地を抜けて西米良に行くコースを取った場合のみ立ち寄りを検討されると良いでしょう。

・錦町
20 京ヶ峰横穴群

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 鍋田横穴の系譜の具象浮彫系装飾横穴、二基しかありませんが、ユギ、楯、人物の顔、剣 等、結構見事な浮彫で古墳館のレプリカにはありません。
 ここを候補に挙げた最大の理由は大村横穴同様、十六菊花文と見なすこともできる、特異な円文が浮彫されているからです。
 しかし、ここのゆぎの浮彫は日本で最も美しく均整がとれていると私は思います(個人的には大村や鍋田横穴の浮彫より好きです)。露天装飾には珍しく表面に塗られた赤と青の顔料が良く残っています。
 ここも人吉盆地を抜けて西米良に行くコースを取った場合のみ立ち寄りを検討されると良いでしょう。

熊本
ほかに

井寺古墳 いでら

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直弧文が描かれた、九州では使用できない阿蘇ピンク石石棺だったが、死床(ししょう)の仕切り板に使用した希少な古墳。直弧文が畿内伝統の文様だとすれば、ピンク石を使えたこのヒトは畿内の有力者だった可能性もある。ピンク石や直弧文は畿内から送り込まれた管理者か?Kawakatu




以上解説・装飾古墳今昔紀行管理者・蕨手(わらびて)氏
感謝

この記事はまだ不完全です。今後書き加え、書き直しを続けます。Kawakatu
いずれにせよどの古墳も石室も石人も、ずべてが加工しやすい阿蘇などの溶結凝灰岩のあったおかげだ。火山の多い九州だから凝灰岩はどこよりも多かった。火山がなければこの石がない。すると硬い花崗岩や玄武岩、もろい泥岩、砂岩を使うしかなくなる。すると複雑な形状が後世にならねば作れない。
岩石、土壌、土質は大きく人間の生活の豊かさに関わるのだ。