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「船泊23号女性人骨の高精度な全ゲノムから,アルコール耐性や皮膚色など複数の形質を 推定しました。これらの情報を元にした船泊縄文人の復顔については昨年発表を行いました。 今回の研究では,日本の古代人で初めて HLA のタイプを明らかにしています。HLA はヒトの体 の中で重要な免疫機構として働くだけでなく,近年では多くの疾患とも関連していることが 明らかになりつつあります。どのような HLA のタイプがいつから日本列島に存在しているか を確かめることは,日本人の起源だけではなく、我々の持つ様々な疾患に対する理解を進める ことにもつながります。

さらに,疾患関連の変異として CPT1A 遺伝子の Pro479Leu 非同義置換も検出されました。 このアミノ酸の変化は高脂肪食の代謝に有利で,北極圏に住むヒト集団ではこの変異した遺 伝子の頻度は70%を超えています。しかし現代日本人には,この変異はほぼ存在しません。 船泊遺跡から出土した遺物の分析では,船泊縄文人の生業活動は狩猟・漁撈が中心であったこ とが示されており,この変異は彼らの生活様式と関連していた可能性があります。考古遺物か ら推定される彼らの生活が,遺伝子からも裏打ちされたことになります。古代ゲノムは,これ までの研究からはうかがい知ることの出来なかった,古代人の性質をも明らかにしました。

ゲノムの遺伝的多様性が低いことから,縄文人の集団サイズは小さく,それが過去5万年間 に渡って継続していたことが明らかとなりました。縄文人につながる人々は,歴史上集団のサ イズを大きくすることはなく,少人数での生活を続けていたようです。このことも,狩猟採集 民である縄文人の生活様式と関連している現象だと考えられます。

アジアにおける船泊縄文人の系統的位置は先行研究の結果と一致し,アメリカ先住民を含 む東ユーラシア集団の中で,船泊縄文人は系統的には,最も古い時代に分岐したことが示され ました。

ただし,パプア人や4万年前の中国の古代人である田园洞人が分岐した後に分岐した ことも明らかになりました。このことは,縄文人の系統が比較した大陸の集団から長期に渡って遺伝的に孤立していたことを示しています。

しかしその一方で,ウルチ,韓国人,台湾先住 民,オーストロネシア系フィリピン人は,日本列島集団と同様に,漢民族よりも遺伝的に船泊 縄文人に近いことが示されました(図2)。

東アジアの沿岸の南北に広い地域の集団が船泊縄 文人との遺伝的親和性を示すという事実は,東ユーラシアにおける地域集団の形成プロセス を知るための手がかりを提供しており,大変意義深いものです。」


RH20190516

船泊23号女性人骨の高精度な全ゲノム
 


この遺伝子分析は、縄文人の先祖としてのアイヌ人かどうかに大きくかかわる分析になる。というのは船泊遺跡人骨は北海道の縄文人人骨であるが、彼らがアイヌだった可能性があるとされているからだ。

この分析からは、図のように、北海道アイヌやロシアのウルチアイヌ、さらに東北縄文人の一部、また遠く離れて台湾・フィリピン人の源流であろうオーストロネシア人との血のつながりを深く指し示す結果となった。

また現代日本人の中の縄文系遺伝子ゲノムのパーセンテージも、これまで考えられてきたMT遺伝子やY遺伝子分析などよりはるかに多いことがはっきりとなったのである。

数年前からのKawakatuの想定通りの結果だと感じる。

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