音楽の発声法、歌唱法には大きく二つがある。
ひとつはオペラや声楽で教えられるベルカント(イタリア語)唱法で、いわゆるイタリアのカンツオーネの歌い方で、腹式呼吸で、マイクロフォンは使わない広い場所で歌うことを想定した方法。オペラ、合唱、ミュージカルなどマイクを使わない大舞台での歌唱を意識した歌い方。
もうひとつはナチュラルなクルーナー唱法で、マイクと音響設備の発明と発展によって生まれた、ささやくような歌い方。ポップスの多くはこれである。ただ、現在は双方を組み合わせたり、楽曲によって歌い分けたりが目立つようになっている。両方を自在に使い分けられれば音楽は一層幅が広がるだろう。
参考
クラシックの声楽とポップス、歌声や発声方法の違いとは? | Music Lesson Lab (eys-musicschool.com)
旧・老いた犬に芸は仕込めない?: 2008年4月の記事 (tea-nifty.com)
さて、ベルカントはある程度の音楽教育を受けていないと、のどを痛める可能性が高い歌い方で、ポピュラーソングでは、マイクロフォンが進化した戦後になるまでの歌い方だった。戦後日本でも浅草オペラが流行ったのがベルカント歌唱法による会場の隅々まで声が届く歌い方があったからだった。
当時の流行歌手は皆,藤原義江のようなオペラ風歌い方であった。
歌手で言えば、アメリカならパット・ブーンからビング・クロスビーだろうし、日本なら東海林太郎から美空ひばりへの変化に該当するか(諸説あろう)。
パット・ブーンの歌い方はまだベルカントとクルーナーの中間で、藤山一郎もそうだった。これは過渡期の歌手である。
違いを一言でいうのなら、声を張り上げろうろうと歌うのか、つぶやくように流すように歌うのかであるが、ひとえに音響技術がこの変化に関与したのは間違いない。こうして”ベルベット・ボイス”という言葉も生まれた。ビングやのちのフランク・シナトラはこう呼ばれた。
すぐれたマイクがあれば、ささやくようなウイスパーでさえ拾いあげてくれるから、圧倒的に歌手ののどの負担は軽減される。歌手寿命が長くなるのである。
過去、こうしたテクニックの違いに、うまくはまらず歌えなくなった歌手は多い。例えば天地真理はこれに当てはまる。高校で二年ほどの合唱法を習ったがために、マイク時代になっていてもろうろうと歌う癖があった。しかも裏声(ファルセット)を多用する。
続く

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