「ついに先週、期待通りチベット高地で出土していた下顎骨と歯がデニソーワ人由来であることが、中国蘭州大学とドイツ マックスプランク研究所によりNatureに発表された(Chen et al, A late Middle Pleistocene Denisovan mandible from the Tibetan Plateau(チベット高地で発見された中更新世後期のデニソーワ人下顎)Nature in press, 2019:https://doi.org/10.1038/s41586-019-1139-x)。


この下顎骨は中国チベットの夏河洞窟から1980年に出土していた。アイソトープを用いた年代測定で16万年前後の骨と特定されており、16万年という時間によりDNAはすでに破壊されており、ゲノム解析は困難だった。

そこに登場したのが、最近古生物学で利用され始めたコラーゲンのアミノ酸解析技術で、たんぱく質自体は核酸より経時的変化に強いので、最近では恐竜の系統を調べるのに利用されるようになっている。

この研究では、この骨から6種類のコラーゲンを取り出し、そのペプチドの配列から系統樹を解析し、これまで発見されている人類の中ではデニソーワ人に最も近いことをついに突き止めた。」



  • 同じ形状の下顎と歯はチベットを含む中国で中更新世人類として既に多く発見されており、今後の解析で、それらがデニソーワ人であることが確認される可能性が高い。
  • 今回解析された歯の形状は初期ホモ・サピエンスと、中更新世人の中間に位置しており、デニソーワ人と考えても問題はなく、この下顎を基準にデニソーワ人の骨を探すことが可能になる。
  • デニソーワ洞窟でも16万年前にデニソーワ人が生息していたことが確認されているので、今後チベット高原からシベリアにかけてのルートで発掘が活性化される。
  • そして何よりも、この骨は3000mの高地で発見されており、高地順応遺伝子進化の謎が解ける。


    ここまでヤフー考古学ニュースデニソーワ人ゲノムをめぐる2つの謎が解けてきた 2、デニソーワ人の高地順応遺伝子


  • デニソワ人は遺伝子DNA的に、ネアンデルタール人とは別種の旧人である。それがネアンデルタールよりもアジアではさかんに移動して現生人類=ホモサピエンスと交配していることがわかった。


  • ある意味、アジア人にとってはネアンデルタールよりもデニソワのほうが、遺伝子の比率が高いと成るかもしれないので、そうなればコーカソイドとモンゴロイドの見かけの違いにも彼らの影響があったことになるかもしれないから興味深い。

    ラスコーなどの壁画がネアンデルタール人によった可能性が言われ始めているわけだが、インドネシアなどの手形壁画の主がデニソワ人である可能性も高いわけだ。ラスコーなどにも実は動物以外に手形絵画が描かれていることは意外に知られていない。中沢新一はこれに触れて、人間の芸術性や音楽性を司る右脳機能について言及していた。右脳・左脳かどうかはさておいても、例えば日本人がなぜ蝉の鳴き声に詩を書くのに対して、西欧人は蝉の声を聞き分けられないかなどの疑問は、ある程度脳の、芸術性と言語性で説明が出来るようだ。


    西欧人には高周波が聞えにくいらしく、日本人には低周波が聞き取りにくいらしい。その違いがもしかするとネアンデルタールとデニソワの遺伝子の持っている機能の違いで解釈できないだろうか?いずれそういう説も出てくるかもしれない。

    あるいは女性と男性の違い・・・言語が発達した女性と、理論性が発達した男性・・・地図を見るのが苦手な女性と得意な男性・・・ひいては自動車の事故の軽減対策に役に立つ?などなど、ゲノム研究はサンプルさえ整えば現代人の分析に相当な変革を起こす。もちろんサンプリングが困難な古代人骨からも、サンプルが増えれば増えるほど、どんどん文系ではわからなかった謎解きが可能になるだろう。

    そうなると主観的だったこれまでの文献史学の言及は次第に必要性をなくし、大学研究所内での居場所がなくなる可能性すら出てきそうだ(そもそも文献にはうそと潤色と政治性が多すぎた)。今でも、日本古代史に限れば、いいかげんな『日本書紀』記述は片隅へ追いやられ、考古学や遺伝子学や環境学によって主力の座を奪われつつある。

    ネット上の、興味本位の、主観的神秘主義や、宗教・信仰中心の、証拠のない心霊的言及も減っていくなら、それはありがたいことである。もちろんということは、科学をまったく学習しない主観論者・心霊・神霊・神秘・異界論者や超常現象でひともうけしてきたまがい物論者たちの存在もあやうくなるということだ。そもそも主観論や神霊憑依のようなものは古代シャーマニズムと同源で、迷信だから無用であることは言うまでもなかったわけではあるが。まともな学問で解明したまっとうな愛好家・好事家には邪魔な迷信理論はなくなるにこしたことはない。


    反面、科学にも間違いは多く、勘違いも横行してきた。今後は好事家もくれぐれもよく本を読み、情報を分析する判断力が必要であることは言うまでもない。科学は時として詐欺をしたり、うそをつくモンスターであるからだ。妄信もよろしくない。



    少なくともいえることは、日本人のルーツ出所は何箇所もあり、まして単一民族である可能性は完全に瓦解しているという認識である。それができない人々に日本人を語らせるのは時間の無駄である。右翼や左翼の史観では意味がない。ましてシャーマニズムと超常現象で歴史を全部解説してしまおうとする迷信家はもう邪魔であるし、宇宙人でとか、超常現象ででも古代人を語って欲しくはないのである。そうした来訪者を正当な分析者とKawakatuは望んでいない。ここには主観論者は一切来ないで欲しい。書き込んでも削除する。



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