「昔、帝(中略、文字がないし読めない帝名がここに入っている)、高辛氏の世に中国は犬戎に苦しめられた。そこで帝は、臣民に呼びかけ、犬戎の将、呉将軍の首をとってきた者には莫大な黄金と萬家の国邑を与え、美人の王女を妻として授けようと約束した。
ところが、帝には五色の毛並みの一匹の犬がいた。その名を槃瓠といった。ある時、槃瓠がなにやら人の首のようなものをくわえて帰ってきた。よく見るとそれは呉将軍の首だった。帝はしかし、槃瓠が犬であったため約束を守らなかった。しかし、王女は帝を諫めた。帝の命令は一度下せば実行されなければならない。さもなければ皇帝としての権威は失墜するであろう。約束は守りなさい。
帝はいたしかたなくこれに従った。
槃瓠は王女を背に乗せ、南山の奥深く入り洞窟に住んだ。やがて六人の男子と六人の女子を産んだ。この六組が夫婦になり、木の皮から布を作り、父・槃瓠の毛並みの色に合わせて五色に染め上げ、犬のような尾のある衣服を作って着た。これら六組の末裔が、長沙、武陵などの末裔である」(簡略化Kawakatu)

ヤオ族などの犬祖伝説の内容はだいたい上の記述を基盤にしており、長沙、武陵とは中国洞庭湖の南北に位置する「南蛮」である。古代、刑蛮(刑の字は正確には作りの上に草冠)・・・すなわち楚の中心部。