田中勝也『東アジア子伝承と日本原住民』

スマトラ・ニアス人の物語

 一人の王女がいた。重い皮膚病にかかり、一匹の犬を伴ってこの島に渡って来た。薬になる良い木を見つけた。王女と犬は結婚し、息子が一人生まれた。息子は大きくなり妻を捜しに旅に出た。その時、母王女は彼に指輪を与えた。この指輪がピッタリとはまる女性を妻にしなさいといった。息子はニアス島を出て国中を探したが、見つけられなかった。島に戻り、試しに母の指に指輪をはめてみたら、ナント、ピッタリ合ってしまった。二人は結婚し、その子孫が俺たちニアス人だ。


ジャワのカラン人の間にはそっくりな話が伝わっている。
少し違うのは、「王女がある時機織りしていて梭(ヒ)を落とす。拾うのが面倒で、梭を拾ったものなら誰とでも結婚すると言ってしまう。拾ったのは一匹の犬で、王女は犬と結婚する。
カラン人は母と息子が夫婦のように一緒に暮らすという。こうした行いが世界中の富や繁栄を手にできる方法だと固く信じている。