狼
狼のトーテムは最も古い話に現われていて,
キルギス人自身の中に含まれる突厥人,すなわ
ち「テュルク」民族と結びつけられて語られて
いた。この話は『周書』の中に記されている。
しかし,我われキルギス人にだけ語られてきた
様子を紹介しよう。それはつぎのようなトーテ
ム神話として語られている。
むかし,ある人が村里で子どもを育てている
狼を眼にした。その人が近づいて見たとき,狼
は山腹の方に去って行った。その子はふつうの
人間の子どもであった。その人はこの子どもを
連れて帰り,その名を「カバ」と名づけ,大き
くなるまで育てた。カバの髪の毛は狼のうなじ
の毛のように立っていた。(他の言い伝えでは,
カバの前額から背中までたてがみが生えていた
といわれる)。それで,「ジャルドゥ・カバ」と
呼ばれていた。今のキルギス人の「カバ」部落
はその「ジャルドゥ・カバ」の氏族から始まっ
たといわれる。
このトーテム神話は,それ以前の「突厥」の
狼トーテムとよく似たかたちで語られているの
で,キルギス人の狼トーテムも以前からあった
ことが確かめられる。狼が子どもを乳で育てて
大きくする話から,叙事詩「マナス」では英雄
マナスのもう一つの呼び名が「蒼いたてがみ」
であると語られていて,このことばは意味なく
語られているのではなく,キルギス人のトーテ
ムが狼であるという認識によって語られていた
ことがうかがわれるのである。
犬の神 クマイク 庫麻依克
クマイクは「バルタ・ジュタル」という鳥か
ら生まれたと伝えられている。その鳥はアル
ティ・ベレス・アチ山に行ってお産をすると,
生まれた子どもは三日で子犬となって鳴いてい
たといわれる。それから,それが小さなときに
探し出して,訓練しながら飼っているとクマイ
クになった。お産をして3日過ぎると,「バル
タ・ジュタル」は飛んでもどって行った。
クマイクについて,このような伝説が語られ
ている。ところが,キルギスの民間口承文芸で
はクマイクは「犬の主人」であり,犬たち種族
の保護神,主人として現れ,神聖な動物として
のイメージがつくられている。クマイクに見ら
れる特性は人に親しく近づき,人を野獣から防
いだり助けていたことである。例えば,コイカ
プから魔女が地上に出てくると,その中の七つ
のキュンキュルの地からクマイクはそれを覚っ
て吠えながら出てくる。いつもこの犬は,魔女
に歯をむきだす。魔女はクマイクがいる家には
思い切って行動することはできない。このよう
なイメージはキルギス人の「不思議な物語」で
は広く話されている。
叙事詩「マナス」ではクマイクはマナスを守
る神聖な動物のようであり,マナスの後に従い,
かれを守り,マナスが死んだときにクマイクも
消えてしまう。その後,英雄セメテイが現れる
と,クマイクも再び現れる。
そこで,キルギスの民間口承文芸では,クマ
イクは主人であり,以前はどのような獲物もよ
くとらえることができたが,人間を自然からの
危険な力より守ってくれるというイメージで描
か
http://www2.ngu.ac.jp/uri/gengo/pdf/genbun_vol2101_06.pdf
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狼のトーテムは最も古い話に現われていて,
キルギス人自身の中に含まれる突厥人,すなわ
ち「テュルク」民族と結びつけられて語られて
いた。この話は『周書』の中に記されている。
しかし,我われキルギス人にだけ語られてきた
様子を紹介しよう。それはつぎのようなトーテ
ム神話として語られている。
むかし,ある人が村里で子どもを育てている
狼を眼にした。その人が近づいて見たとき,狼
は山腹の方に去って行った。その子はふつうの
人間の子どもであった。その人はこの子どもを
連れて帰り,その名を「カバ」と名づけ,大き
くなるまで育てた。カバの髪の毛は狼のうなじ
の毛のように立っていた。(他の言い伝えでは,
カバの前額から背中までたてがみが生えていた
といわれる)。それで,「ジャルドゥ・カバ」と
呼ばれていた。今のキルギス人の「カバ」部落
はその「ジャルドゥ・カバ」の氏族から始まっ
たといわれる。
このトーテム神話は,それ以前の「突厥」の
狼トーテムとよく似たかたちで語られているの
で,キルギス人の狼トーテムも以前からあった
ことが確かめられる。狼が子どもを乳で育てて
大きくする話から,叙事詩「マナス」では英雄
マナスのもう一つの呼び名が「蒼いたてがみ」
であると語られていて,このことばは意味なく
語られているのではなく,キルギス人のトーテ
ムが狼であるという認識によって語られていた
ことがうかがわれるのである。
犬の神 クマイク 庫麻依克
クマイクは「バルタ・ジュタル」という鳥か
ら生まれたと伝えられている。その鳥はアル
ティ・ベレス・アチ山に行ってお産をすると,
生まれた子どもは三日で子犬となって鳴いてい
たといわれる。それから,それが小さなときに
探し出して,訓練しながら飼っているとクマイ
クになった。お産をして3日過ぎると,「バル
タ・ジュタル」は飛んでもどって行った。
クマイクについて,このような伝説が語られ
ている。ところが,キルギスの民間口承文芸で
はクマイクは「犬の主人」であり,犬たち種族
の保護神,主人として現れ,神聖な動物として
のイメージがつくられている。クマイクに見ら
れる特性は人に親しく近づき,人を野獣から防
いだり助けていたことである。例えば,コイカ
プから魔女が地上に出てくると,その中の七つ
のキュンキュルの地からクマイクはそれを覚っ
て吠えながら出てくる。いつもこの犬は,魔女
に歯をむきだす。魔女はクマイクがいる家には
思い切って行動することはできない。このよう
なイメージはキルギス人の「不思議な物語」で
は広く話されている。
叙事詩「マナス」ではクマイクはマナスを守
る神聖な動物のようであり,マナスの後に従い,
かれを守り,マナスが死んだときにクマイクも
消えてしまう。その後,英雄セメテイが現れる
と,クマイクも再び現れる。
そこで,キルギスの民間口承文芸では,クマ
イクは主人であり,以前はどのような獲物もよ
くとらえることができたが,人間を自然からの
危険な力より守ってくれるというイメージで描
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