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写真の人物は後頭部に仮面をつけている。
よく日本人がお祭で買ったお面を後ろ前にかぶることがあるが、この人物にはちゃんとした理由があってこうしている。理由がわかりますか?

場所はインド、スンダーバンス・デルタという密林地帯。
ここは獰猛な野生動物の宝庫。

そう、彼はボートを漕いでいるさなか、背後からトラに襲われないために仮面を後ろ前にしているのである。

「トラは人間を殺しますが、分布域内ならどこでもどこででも殺すというわけではありません。非常に脆弱な被食種、つまり人間が豊富に存在していることを考えると、これはトラの側に大きな抑制が働いていると解釈できます。トラが日常的に人間を食べている場所のひとつがスンダーバンスです。」
スミソニアン研究所ネコ科動物専門家ジョン・サイデンステッカー

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■化石証拠に見る原生霊長類・人類の被捕食者としての「人生」
これがこの章の本当の題名である。

霊長類も現生人類も、野生動物の中では脆弱な存在である。
とくに人は木登りもへたであるし、走るのも遅いし、泳ぎもへたくそである。
そのうえ、齧り付き、肉をひきちぎる際に邪魔になる毛皮すら着ていない。
食肉獣にとっては格好のエサとなる。

そして人類は、捕食者から自分を防御することで頭脳を発達させてきた一面を持っている。
南アフリカには初期ヒト科の骨が堆積した洞窟がいくつもある。
こうした骨はどのようにしてそこに大量に存在するのかを考えるアプローチがある。

そのようなおびただしい洞窟のあるひとつの場所のある頭骨に、一対の穴がうがたれていた。
頭骨の持ち主はアウストラロピテクスだった。そして穴をあけた張本人は100万年~200万年前のネコ科動物ヒョウである。

■タウング・チャイルド
200万年前のアウストラロピテクス・アフリカヌスの幼子の遺骸につけられた名前である。1924年、レイモンド・ダートが発見。その頭骨には脳の化石が残存していたのだが、頭骨には肉食獣の歯型はなかった。そのかわりに深く何者かがひっかいたあとが残っていた。猛禽類の爪あとだった。
幼児はむごいことに、立っているところを巨大な猛禽類に襲われ、頭をがっしりと掴まれたまま運ばれた。
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■グルジア共和国首都ドマニシの遺骸
見つかった頭骨にはサーベル・タイガーのあけた穴があいていた。調査の結果、古代人はときおりサーベル・タイガーのエサをあさっていたらしい。これもまた進化の一過程で必要な知恵が生まれるきっかけだっただろう。パット・シップマンは人類が猛獣を狩る狩猟者だったといイメージを完全にくつがえした。
人類に限らず、生物の多くは猛獣のエサをあさって生きながらえた方が危険が少なく、より効率的だということ。これは中生代に帝王のような存在だったと思われてきたティラノ・ザウルスでも最近言われ始めている。死肉をあさって巨大化する方が、リスクの大きな狩猟よりも生存率が圧倒的に高くなる。

狩られるモノ、あさるモノだった人類が狩猟と言う積極的行動を覚え、攻撃によって防御も覚えていく。その過程こそひとつの「進化」だったのである。他の類人猿にはないこの狩猟という発見はどのように人類を発展させていったのだろうか?

ちなみに、チンパンジーやヒヒも、たまに草食動物を捕食する。そしてサル科動物は残酷で、それを食べずにもてあそぶ習性がある。これは人類にもある。知能は時に残酷である。肉食動物にはない行動である。

参考文献ドナ・ハート 著
ロバート・W・サスマン 著
伊藤 伸子 訳
『ヒトは食べられて進化した』
http://www.kagakudojin.co.jp/book/b50173.html


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