■『万葉集』東歌
・巻第九 高橋虫麻呂詠歌
1738 しなが鳥 安房(あは)に継ぎたる 梓弓(あづさゆみ) 周淮(すゑ)の珠名(たまな)は 胸別(むなわけ)の 広き吾妹(わぎも) 腰細の すがる娘子(をとめ)の その姿(かほ)の 端正(きらきら)しきに 花の如(ごと) 咲(え)みて立てば 玉桙(たまほこ)の 道行く人は 己が行く 道は行かずて 召(よ)ばなくに 門(かど)に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻(おのづま)離(か)れて 乞(こ)はなくに 鍵さへ奉(まつ)る 人皆の かく迷(まと)へば 容艶(かほよ)きに よりてそ妹は たはれてありける
・巻第九 高橋虫麻呂詠歌
1738 しなが鳥 安房(あは)に継ぎたる 梓弓(あづさゆみ) 周淮(すゑ)の珠名(たまな)は 胸別(むなわけ)の 広き吾妹(わぎも) 腰細の すがる娘子(をとめ)の その姿(かほ)の 端正(きらきら)しきに 花の如(ごと) 咲(え)みて立てば 玉桙(たまほこ)の 道行く人は 己が行く 道は行かずて 召(よ)ばなくに 門(かど)に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻(おのづま)離(か)れて 乞(こ)はなくに 鍵さへ奉(まつ)る 人皆の かく迷(まと)へば 容艶(かほよ)きに よりてそ妹は たはれてありける
・1739 金門(かなと)にし人の来立てば夜中にも身はたな知らず出でてそ逢ひける
上総(かみふさ)国周淮(すえ)と言うから今の千葉県木更津あたりである。ここに「珠名娘子(たまなをとめ)」という美女がおった。
その東女は「胸別の広き」=おっぱいがどどーんと張り出した、「腰細のすがる」=ジガバチのようにウエストが細くて腰がばばーんと張った女で、今風に言うなら「キュッ、ボン!な」ギャルだった。彼女は夜中に誰か男が戸を叩くと、一足飛びに飛び出してゆくような性格で、
大胆にして男好きである。
外に男が来たら夜中でも出てきて逢うんじゃ。
その東女は「胸別の広き」=おっぱいがどどーんと張り出した、「腰細のすがる」=ジガバチのようにウエストが細くて腰がばばーんと張った女で、今風に言うなら「キュッ、ボン!な」ギャルだった。彼女は夜中に誰か男が戸を叩くと、一足飛びに飛び出してゆくような性格で、
大胆にして男好きである。
外に男が来たら夜中でも出てきて逢うんじゃ。
・巻第十四 常陸あたりの?東娘の歌
14-3467 奥山の真木の板戸をとど押(と)して 我が開かむに入り来て寝さね
14-3467 奥山の真木の板戸をとど押(と)して 我が開かむに入り来て寝さね
あなたが扉をとんとんと叩いたらあたしはすぐに板戸を開けるから、飛び込んできて押し倒してね。
・常陸の国の女の歌
庭に立つ麻手刈り干し布さらす 東女を忘れ給ふな
庭に立つ麻手刈り干し布さらす 東女を忘れ給ふな
あなた、都に帰るのはいいけれど、庭で麻を干しているような田舎農家のあたしのことを忘れたらただじゃおかないわよ。
解釈
そもそも万葉集で女性の体型にいい及んだ歌はこの東歌くらいではなかろうか?一般に女性には髪の黒いとか色が白いとかの表現をおくゆかしく使うものだが、虫麻呂めは、東国のパッションあふれる女性によほどいかれたのか、思わず都の儒教道徳もふっとんだようだ。要するに東歌はこういう東国の女性たちのあからさまなありさまをそのまま歌にしたものがあふれている。
そもそも万葉集で女性の体型にいい及んだ歌はこの東歌くらいではなかろうか?一般に女性には髪の黒いとか色が白いとかの表現をおくゆかしく使うものだが、虫麻呂めは、東国のパッションあふれる女性によほどいかれたのか、思わず都の儒教道徳もふっとんだようだ。要するに東歌はこういう東国の女性たちのあからさまなありさまをそのまま歌にしたものがあふれている。
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■『今昔物語集』
・尾張国愛智郡(名古屋)の女
美濃国の方県(かたがた・岐阜市)郡の「美濃狐」は百人力の女だったが、尾張国にやってきて、往来の旅人を襲ってはものを奪ったり、売り物を盗んだりで人々を大いに困らせていた。うわさを聞いて尾張の女が尾張名産のはまぐりを山ほど積んで荷車を引いてきたのだが、実は「熊つづらのねり鞭」という強烈なツル鞭を二十本も隠し持っていた。車を引いて、うわさの美濃狐が出るのを待っていたが、くだんの美濃女が何も知らずに現れ、はまぐりを奪おうとおそってきた。ここぞとばかりに尾張女は鞭で美濃女をシバき始めたら、叩くたびにしなってうなりをあげる鞭が美濃女のやわはだの肉を剥ぎ取っていくのだった。
なんとすさまじき尾張女と美濃女よ。
・尾張国愛智郡(名古屋)の女
美濃国の方県(かたがた・岐阜市)郡の「美濃狐」は百人力の女だったが、尾張国にやってきて、往来の旅人を襲ってはものを奪ったり、売り物を盗んだりで人々を大いに困らせていた。うわさを聞いて尾張の女が尾張名産のはまぐりを山ほど積んで荷車を引いてきたのだが、実は「熊つづらのねり鞭」という強烈なツル鞭を二十本も隠し持っていた。車を引いて、うわさの美濃狐が出るのを待っていたが、くだんの美濃女が何も知らずに現れ、はまぐりを奪おうとおそってきた。ここぞとばかりに尾張女は鞭で美濃女をシバき始めたら、叩くたびにしなってうなりをあげる鞭が美濃女のやわはだの肉を剥ぎ取っていくのだった。
なんとすさまじき尾張女と美濃女よ。
・尾張国中島郡(海部郡大治町)の男が尾張女と夫婦になった。その女は夫に麻織りの着物を着せていた。それを着て夫が表を歩いていると、国司の目に麻の着物が目にとまってしまう。「そのようないい着物はおまえには分不相応である。俺によこせ」と着物を脱がされて、丸裸ですごすご家に帰ってきた。
すると女房は大憤慨し、直接国司のところへ取り返しに行った。
ところがあっちは返そうとしない。
「それじゃあ」というやいなや、女房は国司のいる上座へ向かい、二本の指で彼を引きずり出し外へ放り出した。あきれかえっている一同の目の前で、国司が奪った着物を脱がせると、さっさと家に帰ってきた。
ところがそれを見て、今度は夫のほうが驚き震え上がってしまった。そして不幸なことに、この怪力女房は離縁されてしまった。
話はこれで終わらない。
故郷の萱津に戻った彼女が川で洗濯していると、そこへ積荷をたくさん積んだ商船が通りかかって、船頭が女を冷やかした。女は「うらさい!」と咆えると、船ごとひっつかんで、積荷をずるずるとおかに引き上げてしまった。船頭たちはびくともうごかない荷物と彼女に閉口し、ついに土下座してあやまった。女はそれを聞くと、こともなげに軽々と船を川に戻してやったという。
すると女房は大憤慨し、直接国司のところへ取り返しに行った。
ところがあっちは返そうとしない。
「それじゃあ」というやいなや、女房は国司のいる上座へ向かい、二本の指で彼を引きずり出し外へ放り出した。あきれかえっている一同の目の前で、国司が奪った着物を脱がせると、さっさと家に帰ってきた。
ところがそれを見て、今度は夫のほうが驚き震え上がってしまった。そして不幸なことに、この怪力女房は離縁されてしまった。
話はこれで終わらない。
故郷の萱津に戻った彼女が川で洗濯していると、そこへ積荷をたくさん積んだ商船が通りかかって、船頭が女を冷やかした。女は「うらさい!」と咆えると、船ごとひっつかんで、積荷をずるずるとおかに引き上げてしまった。船頭たちはびくともうごかない荷物と彼女に閉口し、ついに土下座してあやまった。女はそれを聞くと、こともなげに軽々と船を川に戻してやったという。
ようするに尾張の女は怪力で男勝りで、とてもじゃないが西国男など相手にならんと思われていることになる。
そういう意味で、あきらかに尾張も美濃も関東人である。ところが東国・関東の開拓時代にはそいう女性像が求められてもいたわけである。これようするに「かかあ天下と空っ風」の世界の開始だったと言える。坂東武者、あづまあたりのえびすには、そういう女性上位でよく働く女が必要だったのだ。
そういう意味で、あきらかに尾張も美濃も関東人である。ところが東国・関東の開拓時代にはそいう女性像が求められてもいたわけである。これようするに「かかあ天下と空っ風」の世界の開始だったと言える。坂東武者、あづまあたりのえびすには、そういう女性上位でよく働く女が必要だったのだ。
次回は武家社会の逸話。やっぱり怖いよ、ひがしの女。
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