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日本人が縄文時代から澱粉粉を採集してきた植物は葛以外にも蕨(わらび)、ヒガンバナ、テンナンショウなどがある。

◆蕨粉
中心地は岐阜県飛騨地方である。
地元民は蕨の澱粉生成過程でうわずみの黒いところ(黒花という)を食べてきた。沈殿した白花は飛騨特産の和傘や提灯の糊とされてきたという。もったいないようなことだが、今でもわがなつかしの郡上八幡あたりの職人町ではそうしているのだろう。

この糊はやがて良質の金箔を貼り付ける糊としても珍重されている。
そもそも金箔とわらび糊による方法は、聖武天皇時代の大仏造立のアマルガム工法による水銀禍の反省からうまれてくるものかと想像する。→アマルガム

それにしても蕨餅から金箔にはなかなかわれわれは連想が行かない。
1キロのワラビからわずか30gしか採れないというから、白花の歩留まりはわずかに3パーセントである。
黒花に黒砂糖と寒天でワラビ餅を作ったものを大分の安心院地方で作るおばあさんがいたが、残念ながら亡くなった。もう一度食べたい味である。

◆テンナンショウ
サトイモ科のマムシ草の仲間で、夏から秋にミズバショウやカラーによく似た花を咲かせた後、真っ赤なトウモロコシのような種をつける。


猛毒を持つこれをあく貫してまで食べるのは世界広しと言えども日本の伊豆諸島と、あとはヒマラヤ山麓だけ。


◆灰汁とり技術
毒が有るものや、灰汁や渋が多くてそのままでは食べられないものを灰汁貫する技術は、日本で最も早くは南九州に来ているようだが、どうやらそれは中国から来た技術であるらしい。南九州では逆に灰汁を食べる風習が残っているからそうとわかる。また上記の飛騨の黒花も言わば灰汁喰い風習である。上質な白いものを食べずに糊にし、不純物の入っているものを食べるというのは、実に奇妙な習慣だと言わねばなるまい。もっとも上質品が高く売れることもあるだろうが。
職能民や漁師や農民には、確かに売りに出せない二級品を好んで食べるしかないという事情もあっただろうが、時間が経つとむしろそっちを愛好し始めるというガッツがある^^;。テレビのケンミンショーなどでも、何もこの時代になっても、そんなものを、あるいはまだそんな勘違い食品を、といった「ものずき地方色食品」がよく出てくるが、できないもの、ないものの代用品や、二級品でうまいものを作り上げるのは一種の創意工夫であると感心する。

◆灰汁応用文化と染色、釉薬
灰汁とりには普通木灰汁を用いるが、この残った汁は京都以西では陶器の釉薬になるので高価買取されてもいる。柿渋などにしてもそうだが、染料になったり、虫除けの薬になったり、番傘の油代わりに塗られたりして、捨てるところがない。こういうところは中国から陶器技術とともに来て、朝鮮系の職能民にも応用されたようである。また縄文人も柿、栗、トチなどの灰汁汁をいろいろ応用したようである。

◆純粋本葛は鹿児島で作られる
さてわが国で純粋な葛粉を作っているのは鹿児島県垂水市二川にある天野屋だけではないかと橋口尚武は書いている。吉野よりも鹿児島にそれが残っているというところが、南中国、南朝経由の文化圏を髣髴とさせるではないか。
本葛天野屋 http://blog.goo.ne.jp/konan-bunbun/e/ef00b1303a3268c9384588526a5ae0a7


さて樋口秀雄編の『伊豆海島風土記』「八丈島」には面白い記事がある。
伊豆諸島の人々の生活と食の風景である。
「山野に自生の植物にして、島々民の食用に供するものは、大略左の如しといふ。
トコロ、アシタ草(アシタバ。したしもの(おひたし)としてくらふ)、イタドリ(乾かしてもみ飯?にして和して食らふ。あえものか?)、ノビル、ニラ、ミツバ、タラノ芽、(ハマ)ボウフウの葉(さしみのケンに用ゆ)、菊の葉及び花、タンポポ、アザミの葉、ヤマゴボウ、ツハブキ、シズブキ、ツクシ、ツルナ、葛粉、ヤマイモ、ヤマブドウの葉(粉に交えて餅に製す)、ヨモギ、ヨメナ、モガキの芽?、アケビの実、アビイチゴ(アハイチゴ)?、サクラの実、アスナロ(槙の実)、グミ、榎の實、椿の實、コクワ(山ボウシの草)?、ムベの実、各島概ね之に類せば推して知らるべき也。」
享保年間以前?の伊豆博物誌である。
暮らしぶりは縄文時代にかなり近いことがわかる。

また面白いのはこの本には伊豆諸島の男どもは「男の稼ぎは耕作を重にし、そのひまあるときは、山に入りて薪をとり、イモや葛やらを掘り、・・・」と野草採集生活であることが書いてある。意外である。八丈島の男は海人族ではなかったのか?では女は?これが海女なのである。つまり八丈島やらでは女性上位であるのだ。

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