纏向遺跡　国指定史跡に決定

 

 

「え？まだ史跡になっていなかったの？」

という声も聞こえてきそうな纒向史跡指定ニュースが２１日流れた。

 

なぜそんなに遅くなったの？と思われるかも知れないが、あの最速で国指定された吉野ヶ里遺跡でさえ、最初の発掘（１９８６年昭和６１年）から国史跡指定（１９９１年）まで5年かかり、その後もまだ発掘している最中。実際には本格発掘以前から甕棺が出たりしており、佐賀県内では徐々に機運が高まっていた。古いところでは昭和初期、現在の吉野ヶ里発掘担当者だった七田忠昭氏の父の時代に甕棺が出てからすでに始まっていたとも言えるのだ。

今後、遺跡から新たな大発見が出る可能性は、すべての史跡に期待していい。それほど発掘には長期間がかかる。たとえ公園化されたにしても、すべてが終ったと思ってはならない。

 

纒向遺跡も最初の発掘（太田遺跡）は１９３７（昭和２１年・担当土井実）年であるから、あしかけ９０年近くかかったことになる。吉野ヶ里と違って奈良桜井市の都市部にあるために、発掘にはこれだけ時間がかかってしまうのである。

 

隣接する唐古・鍵遺跡との間にも、まだ遺跡がつながっているかも知れず、広大な住宅地や工場敷地、古墳の真下にもまだまだ遺跡が隠されているのかも知れない。とくに博多や奈良市はそういう可能性が当然色濃く存在する。

 

だからといって、宅地の下を掘り返すわけにもいかない。日本は世界にまれに見る遺跡密集地であふれている。

そのほとんどは大都市の下に埋もれていて、大半は未発掘のまま眠っているわけである。このすべてを掘り返すなどまず不可能。だから現在の考古学の発掘結果は、全体のほんの一角、数パーセントが出ているに過ぎないと言うことを、答えを急ぎたがるファンたちはよく頭に入れておくべきである。

 

 

 

 

●位置

石野博信討論集『邪馬台国とは何か　吉野ヶ里遺跡と纏向遺跡』新泉社　２０１１より