さきほどNHKBSの人気番組?超常ファイルで再放送があった茨城鹿島灘に漂流してきたという「うつろ舟」と「金色姫」伝説のことを、遊びで、少々科学から考えてみましょうかな?と。


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この伝承は
1 江戸時代の180?年ころ、上総茨城の鹿島灘にある浜崎舎利浜にUFOのようなうつろ舟(平安で言うウツボ舟)が漂着
2 中に金色に輝く紅い髪の異人の女が乗っており
3 小箱を持っていて、中に蚕が入っていた
4 これが養蚕の始まりであるが
5 そのうつろ舟が奇妙なもので、まるでUFOのように描かれている不思議

ざっと、そういうお話らしい。

この話の大元には滝沢馬琴のSF譚があって、どうもそのまた大元に、瓦版の記事があるんだと。


金色姫お札

曲亭馬琴作

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馬琴以前の瓦版記事


その他伝承の絵図


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その現場は上総浜崎の舎利浜だとある。

では舎利浜はどこ?
詳細地図
https://mapfan.com/map?c=35.76643373474688,140.81026783255055,16&s=std,pc,ja&p=none



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茨城県神栖(かみす)市は一度行った。
息栖(いきす)神社見学で、鹿島神宮にも訪れた旅だった。
神栖市の舎利浜は、千葉県の銚子からバスで鹿島までゆく途中にあり、浜釣りのメッカ。
鹿島灘の長い海岸の、銚子から橋を渡ってすぐの浜である。その時はこの伝説はまったく知らずに通過し、鹿島神宮から息栖神社へ向かうタクシーの運転手に初めて聞いたのが最初。「へえ」で終わった。

息栖神社には別の伝説で、相模から寒田郎子(さむたのいらつこ)なる美男子がやってきて、地元の漁師の娘と悲恋に落ち、二本の松になった話だったと思う。つまり鹿島灘にはけっこうたくさんの漂流伝説があるらしい。

そういう話が多い理由は海流から納得できそうだ。

まず黒潮が銚子沖を通る。


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さらに北から千島海流(親潮)や、日本海から津軽海峡を回った寒流も入るので当然ここらは漁業のメッカ。
で、ときおり黒潮は蛇行すると・・・

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まずは紀伊半島熊野や相模湾、九十九里、銚子、鹿島灘には漂流物が多くなるわけだから、漂流した人間がきてもおかしくない立地だ。

金色姫は養蚕だが、愛知県知多半島には古代に綿花の種を携えた天竺人が来ているし、熊野灘には楊貴妃や徐福ひょう着伝承がある。こうした伝説が海洋国日本の海岸にはいくつあってもおかしくないのだ。

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ただし鹿島灘には徐福伝説はないらしいが。


実はその証拠に北関東から南関東相模や南信と、養蚕関係地には金色姫伝承と像や絵図が実に多い。

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さて、この浮世絵はその現場舎利の浜を描いたものだが、周りの黒ぶちに奇妙な文字がある。これを宇宙人の文字では?などというらしいが、こうした趣味は実はほかにもかなりあって、当時の異国趣味のはやりだったらしい。文字入り浮世絵で検索すると三枚ほど当たった。


黒潮の蛇行は、ここ数年現代の日本でも問題になっており、海が暖かいと起きる事象らしいから江戸期にもあっておかしくはない自然現象。今のは人為的温暖化が大きいようだが、気候変動は過去にも温暖化があったことを教えているので、そう驚くことはなかろう。それより海水面の上昇は大問題。水害を大きくしている。

漂流ということでは大昔から風土記も記紀もかなり記事を割いていた。また元忍者の家からも金色姫とうつろ舟の絵が出ているが、当時の忍者は幕府の情報機関なので、この噂を書き留めていておかしくはない。

すると彼女はいったいどこから来たのか?
まず何国人?

金色と言うのだから金髪かと思えば記事には赤毛と書かれてあり、洋服は中華でもなく、洋服に見える。すると西洋人かな?リマン海流で来たとするとロシア人?浮世絵の文字がさかさまなのがあるのはロシア文字に似る?


さてさて?
そうそう、滝沢馬琴と言えば「南総里見八犬伝」の作者だから、そもそもSF話では大家だと言えそう。そもそも里見八犬伝は南総=千葉北部の里見家の話だから、馬琴は当然南総や上総にはアンテナがあったはずで、金色姫伝来説話を最初から知っていてもおかしくない。しかも江戸の瓦版が少し前にこの情報を流布してある。知っていて絵図を書いたとしても不思議ではないのだ。つまりこの話、どうも馬琴が取り上げて話題になり、その後もアンダーグラウンドで受け継がれ、ついに昭和以後のUFOブームがこれに気づくと、大騒ぎになった様子なのだ。

「うつろ舟」は最初平安時代~中世の熊野灘の海にニライカナイ(天国)に船出するという補陀落渡海(ふだらくとかい)信仰に始まる「うつぼ舟」が元だが、それ以前から、空洞の船話は天孫降臨や朝鮮説話が知られていた。

馬琴は現地の蚕伝来のところははしょり、金色の姫やUFOまがいのうつろ舟を脚色して金儲けしたに違いない。こういう話をしかし江戸時代に思いつける馬琴の想像力には驚く。むしろそっちの方がすごいことだと感心してしまった。

世の中にはこうした不思議や超常現象ばかり集める人も昔から多い。よた話であってもこの世の憂さを晴らすにはあってもいいんじゃなかろうか。小説なんてだいたい全部ウソなんだから。「竹取物語」なんて古代のSFがある国ですから。あれなんか月から来た姫ですぜ。娯楽ですあくまでも。ゴジラだって原作は香山滋の小説です。

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