●アメリカの人種差別について
昨年、クリント・イーストウッドがグラン・トリノ以来10年ぶりに90歳にして主演・監督・脚本という快挙を成し遂げた映画「運び屋(原題 The Mule)」を昨日じっくりと観させていただいた。やはり天才クリント、傑作だった。


運び屋 特集: イーストウッド10年ぶり監督・主演 伝説的名優の“集大成”を見逃すな… - 映画.com (eiga.com)


 クリントはまずは南部に多い共和党支持者なんだとは思うが、西部劇から始まる彼の俳優人生のわりに、彼が後年に作っていった映画には、ほとんどトランプの差別主義的一面はなく、むしろ中華系移民によりそった「グラン・トリノ」もそうだし、日本人によりそった「硫黄島からの手紙」も、まして今回の「運び屋」も、差別に静かに反対している米国人の良心をクリントには見出だすことができる。いわば共和党の良心のかつての代表がクリント・イーストウッド(トランプ登場からは民主党に鞍替え)やハリソン・フォード(共和党支持なのにトランプ反対CMに出演)やジョン・ウェインやチャールトン・ヘストン(前全米ライフル協会会長)やロナルド・レーガンだったと言えるか。

「運び屋」の1シーンで、麻薬を運んでいる最中のタタ(クリント。あだ名)が、路肩でパンクしているカップルの車を直してやろうとして、つい、古いアメリカ白人の癖である「二グロ」と言ってしまうシーン。二人の若い黒人はすぐにこれを柔らかく制して「今は黒人は二グロとは誰も呼ばないですよ。ブラック。あなたがたはホワイトです」と返す。ほかの映画ならそれだけで険悪な雰囲気になるのが普通の場面だが、クリントが作るとそういう柔らかな世代からの否定におさまるのだ。そこには戦争へ行った(ベトナムか朝鮮戦争だろう)老人への、黒人なりの尊敬や慰労が見えており、返されて笑いながら「そうかブラック化か。そうだよな」とつぶやくタタの柔軟性には共和党員的なところはみじんもない。古い白人的価値観を笑い飛ばしている気になる。


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運び屋
でのクリントはひたすらかっこいい


以前も書いたが、日本人は海で隔絶されてきて人種問題にあまり頓着がない民族だが、大陸では違う。言葉を選ばねば殺されかねない地域もある。

民族学・生物学・人類学的には、人類=ヒトには種がない。孤独な、一種しかない霊長類、それがヒトである。このことは日本が先進国で最も遅れていることは間違いない事実だ。なぜって、大学教授がいまだに「人種」と平気で使うと言う書き込みが最近ここに来ているからわかることだ。


アメリカでは映画のように二グロとかニガーとか言わなくなった。それはオバマのおかげであろう。そしてそのオバマ・ケアの8年間への反発が、トランプといういびつな怪獣になって生まれ出た。ちょうど敗戦日本が極右から左へ大きく揺り戻されたように。これがヒトである。

おろかなヒトという生物は、まだまだ人種差別をしたがる。そこに「人種」というないはずの概念がある限り。古い観念が老人たちにある限り。しかしクリントは90を過ぎても差別には「夕陽のガンマン」であろうとする俳優だ。頭が下がる。

映画の最後、とうとう警察につかまって裁判を受けるとき、タタは助けようとする弁護士、裁判官に向かって「有罪だ」と何度も言う。訴える。自らを訴える。自己断罪する。やはりクリントイーストウッドは死ぬまでヒーローであり、ガンマンなのだ。

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●米国南部人の姓名について
ところで南部に多いマクドナルド、マッキントッシュ、マコーミック、マックスウエル、マッコイ、あるいはトランプの友人でもあるマクマホンといったMaCが頭にくる苗字だが、だいたいはアイルランド系やスコッティ系であると言う。アイルランド語でMacは父親であるので、あとに来るのは「~子」という意味を持つ。マクドナルドはドナルドの息子という姓名だ。これがイングランド系ならワシントンとかトムソンのようになる。~息子という語が語尾につくわけだ。

イギリスでアイリッシュやスコッティはもともとケルト系の血が混じる民族だから、フランス経由のイングランダ―とは若干言葉に違いがあるわけだ。で、アメリカはスコッティが国を作ったわけなので、身分的にはスコッティが一番であり、アイリッシュは差別されてしまう。例えば父親がアイリッシュだったエルビスでさえ、影では歌手になるしかない身分だったことがわかる。イタリア人もキリストを殺したから差別され、彼を売ったユダヤ人は最下位の身分だった。その下に黒人やカラードや東洋人が来るのである。トランプはそういう旧態前の身分制度を復活させようとしたし、出身地ドイツのナチスも、白豪主義も、KKKも彼の支持者だった。


マックが南部や西部に多いのはおそらくゴールドラッシュの一攫千金に理由があるのではないか。差別されていたブルカラーにはアイリッシュが多いから金の採掘で成功したがったはずだ。その子孫が共和党支持地域に多いからよく目立つのだ。つまり南部は戦争でも負けたし、黒人奴隷もリンカーンにとりあげられたし、小作人やカウボーイになるしかないのだ。それもだめで金でもうけて力を持ち、黒人奴隷をたくさん使う・・・そういう映画の一つが「風と共に去りぬ」だ。

共和党員の多くがそういうなりあがった成金なのである。だから差別したがるし、金銭にこまかく、田舎者で、やぼてんで(ブッシュみたいに)、ブルーカラーに支持される。




アメリカは差別のパラダイスだ。そして暴力と武器の天国でもある。個人主義とはそういうところから「異民族から家族を守るための道具」としてのピストルやライフルに象徴されて生まれたのではあるまいか?それが自由に持てること=個人の自由=自主独立・・・アメリカンスピリッツ、パイオニア精神・・・だいたい歴史が見えてくるんじゃないか?


しかし民主主義先進国が中華やロシアのえせ自由貿易主義にやられないためには、それらは悪しき風習として乗り越えるべき時代になっていると言わざるを得ない。じゃないとコロナによって先に消されてしまうだろう。中華とロシアは食えない。まだまだ来るたびにウイルスをまき散らかすだろう。今も、オリンピックもそういう道具になる。そして民主国家は消滅するだろう。


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