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哲学する文科系生物学者・福岡伸一が「化石博士」宮田真也に質問をしている。福岡著書『ナチュラリスト 生命を愛でる人』。新潮社2018・11


宮田真也
学校法人城西大学 水田記念博物館大石化石ギャラリー 学芸員
「化石博士」の異名持つ化石マニア
https://researchmap.jp/paleoichthyology



その中に宮田が福岡の質問に答えて「恐竜倶楽部」と「なにわホネホネ団」という二つの化石愛好会の存在を紹介していて、興味深い。

なにわホネホネ団http://naniwahone.g2.xrea.com/
【連絡先】
なにわホネホネ団事務局 事務局長:和田岳(自然史博物館学芸員)
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-23
  大阪市立自然史博物館
電話:06-6697-6221 FAX:06-6697-6225
(迷惑メール防止のため、メールは載せません 筆者Kawakatu)
【ホネホネ団データ】
設立年 2003年
事務局 団長・西澤真樹子 副団長・米澤里美 事務局長・和田岳
団員数 400名越え(2019年秋現在 ※2003年からの延べ人数)



恐竜化石は日本国内ではなかなか出にくいけれど、どちらのサイトも、化石を発見したら連絡するといろいろ答えてくれるらしいし、どんどん連絡して欲しいと申されている。


そういえば最近、子供が土器を発見して勝手に持ち帰り復元しちゃったという、森本六璽や森浩一を髣髴とさせる痛快事件があった。奈良県国史跡の大塚山古墳でのことだ。円筒埴輪だった。

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「町教委によると、4月20日ごろ、保護者と子ども、その友人ら数人がタケノコ掘りで古墳を訪れた際、地面に広がっていた埴輪の破片数片を持ち帰って組み立てようとした。破片は過去に誰かがタケノコ掘りで掘り当てたものとみられるという。その1~2日後、別の子も加わって、子どもたちだけでタケノコ掘りや埴輪の発掘をし、埴輪を掘り出してばらばらの状態で持ち帰った。 4月28日~5月1日、復元できなかった破片を保護者が現場付近に戻し、5月24~28日、接着剤で組み立てた埴輪1体を戻した。6月3日に町教委が盗掘を発表し、その報道を知った別の保護者が4日に学校に連絡した。学校が5日に町教委に届け出た。」
https://www.asahi.com/articles/ASN6D6QCMN6DPOMB00Q.html




もちろん土器や埴輪は持ち帰ることは禁止の文化財だが、化石なら問題ない。過去にも大阪の高校生がモササウルスの化石の一部を授業中に発見し、あまりに特大サイズなので学会で大騒ぎ、NHKでも番組にした前例がある。また翡翠なのも姫川では持ち帰ると泥棒だが、海岸線で拾う分にはおとがめがない。そういう子供ならではの冒険は、厳罰を加えることでもないと思う。

国史跡などは文化財で国のものだから叱られてもしょうがない。大塚山では「によると、古墳でのタケノコ掘りは禁止されているが、地元の人たちは慣例でタケノコ掘りをしているという。町教委生涯学習課の吉村公男課長は「文化財保護の大切さを指導・教育するとともに再発防止に努めたい」と話した。(福岡龍一郎)」(同上ネットニュース) とまあ、異例のこと。

往古は古墳などはだあれも管理しておらず、そこから森本や森のような考古学の大家が生まれてきた。今は無理。管理外の古墳は、新たに発見しなければまず自由発掘は無理である。

福岡先生は幼少時代は昆虫から生物学に入った自称「ナチュラリスト(博物学者)」だが、自らを文系生物学者だと自称し、最近は哲学者のような文系からモノを言う科学者として人気もある。その彼がメガロドンの化石をニューヨークで入手して、昆虫研究者から紹介された恐竜学者・真鍋真(国立科学博物館標本資料センター長。画家・真鍋博の息子さん)氏から紹介されたのが宮田さんだった。真鍋さんは福井県立恐竜博物館のアンモナイト専門家中田健太郎氏の異動で赴任し、その後宮田さんは後任として赴任していた。その人事異動は鈴木直(すずき・ただし)さんというある有名すぎる恐竜研究者が退職したためである。

この鈴木さんこそは、福島県双葉町の高校生時代にあのフタバスズキリュウ化石を発見した人であるそうな。彼にしても最初は貝の化石で喜んでいる程度の化石マニア。それがなんと恐竜にたどりついてしまう。そういうもんなんだね、発見や冒険って。


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ところで鈴木さんが化石を発見した双葉町っていう名前にはみなさん聞き覚えがあるはず。あの東北大震災で被害が大きかった漁師町である。実はここには装飾古墳もあり、考古学上も古生物学上もかなりマニアな場所。それが原発の事件で封鎖されてしまったのは記憶に新しい。筆者も当時、装飾古墳がどうなったかでかなり気をもんだ記憶がある。清戸迫横穴〈きよとさくおうけつ〉(国史跡、7世紀)だ。原発からわずか3キロしか離れていないところにある。

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「鮮やかな赤色顔料で7重の渦巻文(うずまきもん)や人物、イノシシ、鹿、犬が描かれた福島県双葉町の装飾古墳、清戸迫横穴〈きよとさくおうけつ〉(国史跡、7世紀)。その奥壁に2007年ごろ、白い物質が浮き出ているのが見つかった。外気温の上昇で岩盤中の塩分が結晶化したものらしい。
 町教育委員会は10年、対策工事を始めたが、翌年3月に東日本大震災が発生。東京電力福島第一原発から約3キロ離れた横穴の工事は、中断に追い込まれた。

 4カ月後、町教委の吉野高光・総括主任主査が防護服を着て、墓室に入った。壁画は無事だったが、原発事故による停電で墓室内の温湿度測定器からデータを送れなくなった。木の根が墓室内に入り込み、遺構を破壊する恐れも出てきたが、抜本的な対策は今もできていない。

 町は帰還困難区域にあり、吉野さんは数カ月に1回、現場に入って観察を続ける。今年の3月11日にも訪れた。「避難中の町民にとって、文化財は故郷を思い起こさせてくれるもの。何とか地域の歴史を残していきたい」


 墓室を絵や彩色、彫刻などで飾った5~8世紀の古墳は装飾古墳と呼ばれ、九州や東日本を中心に全国に600基以上。文化庁が12年、国史跡になっている1府14県の装飾古墳73基を調べたところ、約半数の35基で、環境の変化やカビの影響などによる劣化が認められた。貴重な文化財が元の姿を失う悲劇や危機は、あちこちにある。」
https://www.asahi.com/articles/ASJ455GNNJ45PTFC01F.html




福岡先生の化石好きの話から、いろいろな話が書けた。
先生、感謝しまっせ。
本の内容は福岡氏が好きだった「ドリトル先生」の思い出からはじめて、前回の「動的平衡」ほど具体性はなく、さして面白くはないけれど、子供時代の思い出や、昆虫と化石からつながっていった人間関係などと、最後尾にあるお勧めの博物館などがとても役に立ちます。おおきに!