永島慎二という漫画家が母から聞いた地方の民話を漫画にしている。永島の母親は確か長野県出身ではなかったかと思う。「おそめこのへんか」という。
おそめという村の庄屋の娘が、猿の大将に見初められ、困ったあげく、庄屋が、柿の木の一番はじっこに実った大きな柿の実をとってくれば・・・と答え、猿どんがとろうとしたら枝が折れ、猿どんは転落して死ぬ。娘の悲しげなひとみのバックに、「しかし、本当に彼女を愛してくれたのはあの猿だけではなかったかと年老いてから娘は思うようになった・・・」という切ない一節が挿入されて終わる。

これは猿婿入り伝説が東京生まれの漫画家をして話をふくらませたひとつの実例である。
本来、嫁に行くはずの猿祖伝承を、少し変化させ、「嫁に行かせないで終わる」話として漫画化し、しかし永島独特のメランコリックで大人の童話的結末を導いた秀作といえる。

筆者はこの作品をかなり昔、筑摩書房の現代漫画全集で見た。