有名な今昔物語の生贄を猟師がやめさせた逸話

「美作の国の神 猟師に依りて生け贄を止めさせたはなし」
簡略にする。
「今は昔、美作の国に中参(美作国一の宮・中山社)・高野(美作国式内社・高野社)という聖地があって、毎年生娘を「養い肥やして」神に差し出していたが、ある年、ふらりとやってきた山猟師がこれを知って、やめさせたというお話で、『宇治拾遺』にも同一の文がある。
また飛騨国にもこちらは猿神がやめさせたという話もある。
美作の中山社は猿神で、高野は蛇神だとされており、どちらも祟り神。

飛騨の話には生贄の「生かし方」についてのレシピ?までちゃんと懇切に書かれている。
いわく
「裸にして、まな板の上に”正しく伏せ”、ミヅカキ(神の依ります小部屋)の中に押し込んで、人がみんな立ち去らせ・・・痩せた生贄だと神が荒れるので、作物もうまく育たない。病がはやり、郷が平和にならない。だからばんばん飯を食わせて太らせ頃合いを見て贄とせにゃならん」

ただし、格式高き志摩国・皇太神宮(お伊勢さん)儀式帳では生贄は魚介類。贄は贄。
生贄の文献資料としてはこれが最古か。
お伊勢さんの贄が人にあらずして魚なのは産地だから・・・いや、違う違う。
おさがりにするから食える物にせよ、というわけであろうか?
確かに人は人を食えない。
なんとも人を食った話だ。