源頼朝の平家追討のあとの頻繁な寺社整備事業は、敗者鎮魂のためのものであったことがわかっている。
歴代為政者が勝ったとたんに宗教活動にせいを出し始めるのは世の常であって、それは古代から現代にいたるまでなんら変化がない。

鎌倉の永福寺は頼朝に滅ぼされた奥州藤原氏の基衡(もとひら)が建てた毛越寺(もうつ・じ)の伽藍(円隆寺)をそのまま模したものである。また有名な中尊寺金色堂を覆う覆堂を造ったのは鎌倉幕府であり、北条政子だった。その後も、政子の夢枕には甲冑の武士が現れたりして、鎌倉幕府は何度も平泉の寺院の修繕を行っている。

中尊寺金色堂は当初は藤原三代の遺骸安置場所であったが、のちにここに基衡(訂正→泰衡)の首級が置かれたために、怨霊の棲家となっていった。衆の認識がそう変化してしまったのである。よってここには藤原三代ばかりか判官義経、旭将軍木曽義仲、義高らの怨霊がともに出てこぬように覆堂があとから建てられたのである。もともと金色堂はむきだしであった。

『岩手史学研究』70の中で在地研究家の大矢邦宣は、金色堂が葬堂から霊魂を封じる鎮魂堂に変化すると説いている。つまり怨霊封じのお堂が覆堂建立につながった。

頼朝は、源平のいくさが終わってから、大いに怨霊に悩まされた。そして彼が落馬して死んだ原因として『保暦間記』は怨霊を挙げている。
頼朝の落馬は北条政子の陰謀であるといわれてもいるが、その原因も、政子もまた怨霊に悩まされたからだと考えられる。夫婦ふたりで怨霊に悩まされた挙句、嫁が、怨霊跋扈の原因である亭主・頼朝を殺そうとしたのだと思われる。

ひどいもんだ。

このような中世の怨霊ブームの背景には、古代からの祟り神という観念があったことは間違いがない。

例えば、江戸期にはやるキツネや犬神信仰のバックボーンは、弥生=犬を喰う・・・喰うから供養する。である。ところが縄文の犬埋葬は葬儀でしかない。そこには祟りなどよりも悲しみや愛があったことを感じさせる丁寧な埋葬墓地が出てくる。

つまりこのような信仰、迷信の背景には、あきらかに大陸からの影響がある。

古代日本の都市は、流行最先端九州→それをコピーする西日本、近畿→それをまたコピーする東国・東北。そして唯一なにもコピーしなかった北海道のアイヌという西から東への流行移動経路が当初存在した。それが古墳時代前あたりから近畿だけのダイレクトな大陸コピー文化が生まれてきて、そのあたりからどうやら「祟り封じ」観念が入ってくる。それまでの九州経由文化にはそれがない。古墳の埋葬形態がそうである。

藤原広嗣にせよ菅原道真にせよ、九州では「祟る神」というイメージはなく、むしろ英雄。平将門も怨霊にしてしまったのは畿内の貴族である。ようするに怨霊思想は関西ローカルであり、貴族・武家だけの発想。それが民衆にも伝播して大流行するのが江戸時代の元禄期である。結局それが日本の芸能文化、おたく文化にも影響する。都市伝説もそういうところから派生し、芝居になり、映画になる。

怨霊を怖がるのは、古今東西、やったものが集まった大都市でである。やられた側がいるところでは怨霊は怨霊でなく「お友達」なのである。

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