『播磨国風土記』揖保郡立野条
「土師弩美宿禰、出雲国へ往来し、日下(原文は日の下に下)部野(くさかべの)に病死す。その時、出雲の国の人、来たりて、人衆(もろびと)を連ね立て運び伝え、川の礫(小石)を上げて、墓の山を作りき。故、立野(たちの)と号く(なづく)。」

立野は今の竜野の旧名である。
土師氏の祖である野見宿禰が竜山石の産地である揖保郡竜野で病死したので、出雲の土師氏たちが集合して、ここに大古墳を作ったので、ここを立野と言うという逸話である。

野見宿禰が出雲から氏族を呼び寄せ土師部を作ったのは、記紀、垂仁天皇の后である日葉酢媛命が亡くなった時である。当麻蹴速と相撲をとったのも日葉酢媛の喪送儀礼であった。これは三世紀初頭という記述になるわけだが、実際の年代はよくわからない。おそらく三世紀後半の前方後円墳初期のことであろう。
つまり土師氏は前方後円墳という日本にしかない形式の墳墓を作った最初の土木技術者と言えるかもしれない。

宿禰と蹴速の相撲儀礼は七月七日の七夕の日に執り行われ、結果は宿禰の大勝利で、以後、当麻一族は歴史から消えている。
なぜ七月七日だったかと言えば、それが媛が霊魂となって天上界へ上るにはふさわしい星の日だったからだろうか?ちなみに葬礼は夕刻から執り行われたので、天空には満天の天の川が広がっていたに違いない。

相撲取りが四股を踏むのは「大地の鎮魂」という呪であるとともに、その様子はまさに版築による古墳を踏みしめる様そのものなのだ。現代の四股解釈は稲作儀礼によるとする場合が多いが、実際には踏みしめるシャーマニズムがはじめにあったであろう。

いずれにせよ相撲は最初、喪送儀式の霊魂の鎮魂から始まったことは間違いない。稲作儀礼は後生の付加である。すなわち相撲とは鎮魂儀礼だった。

「大和王権内での土師氏の主な職掌は、殯(もがり)など葬送儀礼の執行、古墳の築造と管理、埴輪の生産と墳丘への樹立、土師器の生産と貢進などであった」
「ヤマトタケルが死後白鳥に化成して飛び去った各所に白鳥陵を造営したという伝説も、土師氏系の所伝と考え」る。(平林章仁『七夕と相撲の古代史』白水社1998)

さて、今の竜野市竜野がかつて「くさかべ」と呼ばれていたことがわかる。
龍野市と言えばもちろん大王の石であった竜山石の産地である。
そして垂仁記によれば垂仁陵の所在地は菅原の御立野(大和国添下郡)であるとしている。
菅原とは土師氏の氏名の一つである。
この菅原遺跡が今ある場所を佐紀といい、ここに佐紀盾列(さきたたなみ)古墳群と菅原東遺跡がある。
土師氏には四腹(四枝族)ありと記録がある。
それは、
①大和国添下郡菅原、秋葉(奈良市西部)
②河内国志紀郡土師郷(大阪府藤井寺市)
③河内国丹比郡土師郷
④和泉国大鳥郡土師郷(堺市鳳)
の四カ所である。

ここにある古墳群はそれぞれ佐紀盾列、古市古墳群であり、いずれも大王クラスの大古墳が存在する。
(大仙古墳、誉田応神陵、垂仁陵などなど)
そのいずれの石も竜山石で作られていると推定できる。

野見宿禰の死に及んで作った墓の表現は、かの箸墓が人を連ねて石を運んだという記事に対応しており、箸中山古墳もまた土師氏の制作によると考えられる(土橋寛)。
出雲の古墳造営技術はこの時点ではるかにを大和を上回っていたのであろう。

ゆえにその造営技術と道具についてもっと詳細に調査されるべきであろう。

ちなみに九州の石工道具について最も詳細な研究成果は、大分県宇佐風土記の丘大分県立歴史博物館に所蔵されている。近畿に関する中世石工と器具についての記述は『当麻寺縁起絵巻』が詳しい。




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