■その分布地は・・・・
1.青 石(下浦石)石井町浦庄の東山、及び龍王に産するもので、阿波郡林町に産する片解石(かたげいし)と共に特に青石と呼ばれて来たもので、その歴史は古いとされていて、良質の緑泥片岩である。又、内谷石と称す石は石井町石井内谷(尼寺の南、矢野の北附近)に産する石で、明治時代まで採掘していたもので、特に薄石(貼石)が採れていたので短册石と称して、板碑・箱(阿波式石棺の側枠)に使用されたものでその歴史は古い。

2.大谷石 徳島市佐古大谷に産する青石で、藩制時代から採掘され、大正年間まで続いていたが、この山が風致林に指定されたので中止となり現在では唯当時の丁場の跡が山崖となって居り遠からその山肌が望まれる。硬度・色・質とも良い石とされていた。

3.佐古石 徳島市南蔵本町医大裏山に産する青石で、大谷石と同様良質である。石口は淡島・西原両氏共同のものと、その西隣に山一つ越えてもう一箇所の石口があり、これは藤崎氏が所有して居り、両者共現在活溌に採掘中でハッパの音を轟かせている。特に西原氏は現在まで六代続いた石割(いしわり)である。

4.大野石 徳島市下八幡町大野に産する青石で、「きめ」があらく、又色彩も汚れて大分不純物を含んでおり良質でない。一般に眉山の北側には良質の青石を産するのに反して、南側は不良と言われている。この石は又八幡石とも言われている。

5.西山石 徳島市八幡町沖浜西山に産する青石で、大野石と同様で良質でない。

6.籠 石(かごいし) 徳島市大原町字籠に産する青石で、赤味が多く、良質でない。

7.大神子石 徳島市大原町大神子、小神子に産する石で籠石と同様余り良質でない。

8.森藤石 麻植郡鴨島町森藤に産するもので昔から森藤石と呼ばれ、大谷石・佐古石・下浦石と共に良質である。特に森藤石は他の産地のものよりも軟質で石細工が容易であるばかりでなく長石物が採れ、石にねばりがある。藍作地帯の農家に使用されているオトヰ(井戸側)は、オトヰとハシリが一つの石で造られる程細工が容易である。例としては鴨島町の協同病院のオトヰはそれであり、又浦庄の某家には便所腰廻り全部がこの青石で造られているのもある。

9.津田石 徳島市津田町乾開に産するもので、主として石垣、捨石に使用され良質でない。

10.片解石(かたかげいし)阿波郡林町西岡に産するものでやゝ良質である。

11.小島石(おしまいし)美馬郡三島村小島宮原に産する。

12.半田石(はんだいし)美馬郡半田町松生に産する。
http://www.library.tokushima-ec.ed.jp/digital/webkiyou/05/0504.htm

■その性質
1.岩石学的分類 岩石はその成因によって火成岩(Igneous rock)、水成岩(Aqueous rock)及び変成岩(Metamorphic rock)に分類されているが、青石は変成岩に属する。

1.火成岩 地球内部の岩漿が漸時冷却凝固して生成したもので、地球の深所に出来たものを深成岩といい、地表に流出して後形成されたものは火山岩である。性硬質で耐久力大で、風化・凍害が少ないが、耐火性が幾分劣る。例、花崗岩・閃緑岩・斑栃岩・流紋岩(石英粗面岩)・安山岩・玄武岩

2.水成岩 既存岩石の破砕又は分解、又は水に溶解した鉱物質・生物体の遺骸等が、沈澱堆積したもので、層状をしており、性軟質で耐久力に乏しく、風化、凍害をうけ易く変色するが、耐火性がある。例、凝灰岩・砂岩・粘板岩・石灰岩

3.変成岩 前の二種の岩石が天然の圧力又は熱のため、物理的又は化学的に変質したもので変質岩ともいう。変成岩は更に分類して接触変質岩と結晶片岩とに大別され、前者は水成岩中の石灰石・粘板岩等の密質岩の中に火成岩が突入し、周囲の水成岩中に火成岩成分又は後成鉱物が混入したり、或は結晶密質となったものであり、後者は地殻の器械的運動及び圧力、液体又はガス体の化学的作用、地熱の作用によって変質し、その構造節理、又は鉱物成分に変化を来したものである。例としては、大理石・蛇紋岩・片岩があり、青石は片岩に属する。

2.片岩の特質 片岩は始原層(Archean)の上部に位する種々の変成岩の総称で、判然とした層状剥理を呈し石英・長石に緑泥石・黒雲母・石墨等を含む岩石で、層理に並行に剥げ易いけれども直角に施工することが困難である。

3.青石の性質 青石は片岩中の緑泥石(Chlorite)を多く含むもので、これを緑泥片岩(Chlorite Schist)と言い、蛇紋岩も緑泥片岩類に属するもので、阿波に於てはこれも青石と言う人もあるが、これは輝緑岩または閃緑岩の割れ目にそってその成分の一部が変質したものである。普通我が国の建築家が蛇紋石と称するのは、白色まだらの蛇紋岩即ち蛇灰岩(Qphicalciterite, Ophalite or Verd Antique)を言っておるものでこれは蛇紋石と方解石とからなる美しい緑色と白色の斑紋を有する石材であって、ここに言う緑泥片岩即ち青石と区別すべきである。

1.緑泥石(Chlorite) 緑泥石には正緑泥・斜緑泥石・扇石・ポンニン石(斜方緑泥)等があり、いづれも単斜昌系に属する。正緑泥石は通常単に緑泥石と呼ばれ、結晶は六角形板状で六方晶系に似た晶癖があり、単晶は寧ろ稀で多くは反覆雙晶をし、そのほか緻密質鱗状のものがある。壁開は底面に完全に発達し、硬度2、比重2.55~2.8。玻瑠光沢があり、底面は特に真珠光沢を放ち、緑色乃至緑褐色で半透明な鉱物である。

2.緑泥石の化学成分 含水鉄・苦土・礬土・硅酸塩と含水鉄・苦土・硅酸塩の混合物で、厳密にいえば非常に複雑である。吹管で吹いても容易に熔けないが、閉管中で熱すれば水を出す。これは緑泥片岩のような結晶片岩には最も普通に存在する成分鉱物で、千枚岩即ち雲母片岩中にも発見される。また諸種の火成岩の二次的変質物として広く存在し、輝石や角閃石等の有色鉱物が分解して生ずる極めて普通な鉱物である。
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※参考「しき」「はえ」とは?
しき 「はえ」と「はえ」との石の切れ目を言い、これは自然に地圧や、地質のずれによって生じたもの。
はえ 緑泥片岩の自然石の大きなかたまりを言うのであって地の底から生えているような感じからそのように呼んでいる。http://www.library.tokushima-ec.ed.jp/digital/webkiyou/05/0504.htm

「しき」とは「しきり」のことだろうか。これで鉱脈を「敷」と呼ぶその語源に近づけた。


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