◆仏像・寺院に使われた木材の変遷史と森林破壊
観世音寺、飛鳥寺(元興寺)建立以来、わが国で仏像や寺社建造物には多くの木材が使用された。彫刻に樹木を用いる割合は日本全体で90パーセントを越えており、日本は世界でもまれな信仰に樹木を使う国である。
 
仏像を中心にその素材となった材木の変遷を追ってみる。
 

 
●飛鳥時代
クスノキの時代  大和法輪寺観音像をはじめ、飛鳥時代にはクスノキ造りの仏像が多い。
            約600体残っている中でそのほとんどがクスノキ造りである。(『木の文化』鹿嶋出版会)
            代表的な著名仏に法隆寺百済観音像がある。
 
1e3fce87.jpg

 
 
 
仏像以外では玉虫厨子もクスノキである。
現存する飛鳥時代の仏像の四分の一は木造である。
その他、中宮寺弥勒観音像、法連寺虚空蔵菩薩像、広隆寺二体の弥勒菩薩像のうち一体はアカマツ、一体はクスノキである。
 
この時期に珍しいのは広隆寺弥勒菩薩半跏思惟像(宝冠弥勒)のアカマツであろう。
 
f51e3c57.jpg

 
建造物では法隆寺五重塔もクスノキで造られていたとされ、その柔軟性が五重塔を災害から護ってきた。
 
56ed1deb.jpg

 
 
 
●平安時代
ヒノキの時代
飛鳥以後、都市部での樹木の減少に伴って仏像は中国の影響を受けて金銅~乾漆~塑像へと変遷していった。しかしいずれも相変わらず樹木に頼ってきたことは否めない。紙も樹木から作られる。
ただ、直接木彫するのことはほとんどなくなっていた。
平安時代になると、植生の管理と復興で再び木造が登場する。しかし素材は成長の早いヒノキに変化。
奈良末期からこの風潮は始まっており、ヒノキと並んで広葉樹も多様されている。これは近江などの木地師たちによる森林管理が朝廷によりとりあげられ、国家森へとなったためであろう。
平安時代に入ると素材は完全にヒノキの白木に移行している。おそらく広葉樹林も枯渇し、木地師や漆師(ぬりし)たちも全国へ離散していった歴史とこれは一致するのだろう。
神護寺薬師、新薬師寺本尊が代表的。
 
珍しいのは法華寺十一面観音のカヤ造り。
8c28fffb.jpg

 法華寺十一面観音像
 
 
また、法華寺本尊の光明皇后像はビャクダンだと言われている。
 
そのほか、カツラ(江刺郡黒石寺薬師如来坐像)、オウチ(広隆寺毘沙門天像)などがある。
 
 
 
記紀に記録されている樹木の総数は53種27科40属ある。その中で有用樹木はヒノキ、マツ、スギ、クスノキなど十数種類。スサノヲの樹木の種を紀伊にまく記事でわかるように、それぞれの使用法は区分け、使い分けがあったらしい。七世紀までは奈良の木材は近隣の森林から得ていたが、藤原遷都の頃には近江から宇治川の流送が主となる。木津川をのぼり木津で水揚げし、山越えで奈良盆地へ。さらに佐保川を下って飛鳥川を下ってようやく藤原京へ運ばれたという。これらはみな近江のヒノキ材であった。
 
東大寺大仏殿も近江甲賀郡・愛宕郡の山林から筏船にして木津川で。やはり陸揚げは木津の港である。
このように木津の曲がりの湾どは港として重要であるから、おそらく継体大王の筒木宮・山代宮(やましろのみや)もこのあたりにあったのだろう。つまり同志社大学京田辺校がある川沿いである。今、学内には筒木宮址の石碑が立っているが、これはよそにあったものを都市開発の邪魔になると二転三転して結局同志社構内におさまったもので、そこが宮だったわけではない(森浩一)。
 
 
 
 Kawakatuを支援するおすすめブログ
 親魏(にぎたま)に逢う蔵書http://blogs.yahoo.co.jp/kairouwait08
 いにしえララバイのブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/hs_anriver
http://blogs.yahoo.co.jp/takabou1331
 bron_yr_aur_UK  http://blogs.yahoo.co.jp/tangerine0109/MYBLOG/yblog.html
 In the suberbs of Kozukata  http://blogs.yahoo.co.jp/baba_chu
毎日え絵っ!http://blogs.yahoo.co.jp/kunuginonusi
装飾古墳今昔紀行http://blog.livedoor.jp/warabite
 

Kawakatu’s HP マジカルミステリーコレクション渡来と海人http://www.oct-net.ne.jp/~hatahata/
画像が送れる掲示板http://8912.teacup.com/kawakatu/bbs/
Kawakatu日本史世界史同時代年表http://www.oct-net.ne.jp/~hatahata/nennpyou.html
民族学伝承ひろいあげ辞典http://blogs.yahoo.co.jp/kawakatu_1205/MYBLOG/yblog.html/
Kawakatuワールドなんでも拾い上げ雑記帳http://blogs.yahoo.co.jp/hgnicolboy/MYBLOG/yblog.html/