◆室井恭蘭 むろい・きょうらん
架空の人物
諸星大二郎(もろほし・だいじろう)が漫画に登場させている江戸時代の国学者という設定の想定。
その作品には『妖魅本草録』 土耳玄書院 昭和31年(1956)(もちろん大嘘) 『信濃秘史』などがある。
土耳玄(「とるくろ」とでも読むか?)書院などももちろん架空の出版社である。

諸星作品に登場する架空の人物及び架空の書物一覧は以下の通り
諸星大二郎「暗黒神話」
   『信濃秘志』/室井恭蘭
諸星大二郎「妖怪ハンター・シリーズ」
   『古墳の呪的文様』/稗田礼二郎
   『朱唇観世音縁起』
   『世界開始の科の御伝え』
   『妖魅本草録』/室井恭蘭
   『民間伝説に顕れたる怪異植物について』
http://www.asahi-net.or.jp/~sy6y-szk/sf/fictitious_book_in_sf.txt

架空を逆手にとって「見つけた」「読んだ」というさも事実のように仮冒して楽しんでいるサイトがこれ。
祭竒洞http://d.hatena.ne.jp/anachrism/comment?date=20090517

こういう洒落を楽しめてこその伝奇愛好家と許容してやるべしなのだが、けっこう騙される人も多そうである。
例えば以下のように、おおまじめに考察している記事もある。
 

 
 ◆ヒトニグサ(人似草)
  芋ニ似テ 大キナル根茎ヲ有シ シバシバ五又ニ分レテ 小児ホドノ大キサニナル 山中ニ自生ス
 マレニ 大人ホドノ丈ニ成長シ 手ヲ振リテ 村民ヲ招クト云フソノ姿 人ニ似タルヲ以テ 人似草ト云ヒ
 村民ラ 気味悪ガリ見ツケ 取リテモ 食ウ事ナシ
 室井恭蘭 『妖魅本草録』
「動物の死体に生える茸で、その形は死体の生前の姿に似る、と言われている。
人間ほどもある大きな茸で、オイデオイデをするなどとも言う。
近年の研究により、これは粘菌の一種であることが判っている。
粘液状から菌糸状となる際に動物の死体から骨格形成に関連した遺伝子を取り込む習性があることも判明しており、生前の姿に似るのはそのためではないか、と言われている。」
http://wiki.livedoor.jp/sss9991/d/%A4%A2%A4%EC%A4%B3%A4%EC%A3%B1
いや、かくいう筆者も危うく・・・。
本当は騙されていたほうが楽しいのが人生なのであろう。

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次回から幽霊や妖怪が見えてしまうという、災害による脳障害について、柳田國男の「遠野物語」などに見える超常現象を題材に、いくつか書いてみたい。幻視とはすなわち脳の病いである。上記の架空記事などをものすることはジョークと妄想と病いの三つに大別するとジョークに入る。しかしまあ、「愉快犯」には違いないな。