猛暑を歩いたために血糖値が異常に高くなり、身動きもとれなくなっていた。久しぶりの更新記事である。


  逃げ水に 飛び込み泳ぐ夢を見た 逃げ水はしかし遠くへ逃げ去っていた
  炎天下でぼくの頭はぐらぐらと揺れ ひどい頭痛に  ぼくは道端にしゃがみこ 
  んで いる自分を 天空から見下ろしていた
  それはあたかも 夢の中の 幽体離脱であった この夏 ぼくは酒を受け付けな  
  くなってしまっている 毎日 灼熱の中に ぼくはみずからの死を感じている
  この一週間ずっとだ それほどぼくの肉体は衰え 夏にさいなまれている

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ヒト以外のヒト科霊長類で狩猟をし、その肉を食うのはチンパンジー(orボノボ)だけである。しかもそれはある地域に限られることが多いという。例えば、極端な乾燥で植物の果実・種子などが十分に確保できないアフリカのタンザニア、コートジボアールなどに生息するグループである。
以下はそれを論じている専門家のサイトである。





人類学では、ヒトが脳を発達させた要因のひとつに肉食をあげるものが多い。つまり狩猟してきた小さなサル類、あるいは場合によってはチンパンジー同様に同類の子供を共食いすることによって、良質で鮮度のよい高タンパク質の肉類を摂取することがDNAに刺激を与え、脳の異常な発達を促す。それが道具を使う工夫、狩りの効率化に貢献した結果、ヒトは他の肉食動物よりも圧倒的な脳の進化を獲得したという説である。ではなぜライオンなどの肉食獣は脳が発達しなかったかというと、肉食獣たちは狩りのための肉体を発達させることにまい進したが、二足歩行で重たい頭を垂直に支えることが可能になった類人猿では、肉体の発達以上に、知能の発達と道具の開発が効率的狩猟を可能にすることにたどり着けたからだという。


ペッカリーの子を捕まえたチンパンジー
ある地域のチンパンジーは小型のサルを捕らえると、引き裂いてうまそうに食べることがわかっている。




核ゲノム分析の、ここ15年間の飛躍的分析結果が、ヒトとチンパンジーが同じ祖先から枝分かれした兄弟であることを証明している。あるいはまた、ゲノムによる分析は、これまで同じヒヒの仲間と考えられてきたマンドリルが、実は別の猿の仲間から進化したヒヒであることも実証できた(ハリス 2016)。これまでヒヒはそのすべてが同じ系列であるとされてきたが、そうではない進化があることがわかった。このように近年の核ゲノム分析の結果は、われわれの常識を実に短期間にくつがえし、形質人類学やわれわれ一般人の主観的意見を、明確でわかりやすく、客観的に、主観では絶対に否定しがたそうな唯一真実の発見をもたらしている。


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またヒヒはサルの仲間ではガゼルなどの小動物を捕まえて食べる習性があることが知られているが、このようなサルの仲間は、ヒヒとチンパンジーとヒトだけである。まだゲノム分析が始まる前の2004年には、すでにヒトはチンパンジーとは98%同じミトコンドリア遺伝子を持つことは言われていた(マークス 2004)。
ゴリラでは95%、オランウータンとはもっと違いがある。それがゲノム段階の分析でもより精密だが、同じ答えを導き出している。
ヒヒの狩猟動画http://danshireview.com/archives/676

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類人猿でチンパンジーは最もヒトにそっくりな遺伝子構造を持っている。その違いはわずかに2%である。ある意味で、人類と類人猿をつなぐ存在がチンパンジーであり、唯一の「兄」だとも言える。それは同時にヒトがサルから分岐したチンパンジーと同じ共通祖先から分岐した生物であることをほぼ完全に否定できなくした。

これが生命の真実の核心に迫るゲノム分析である限り、これを否定するためには、チンパンジーとはまったく違う祖先動物をわれわれは見つけ、提示するしかない。この地球上の同時代を生きるほかの生物からである。それはほぼ不可能であろう。

(奇抜な意見の人々が言い出したヒトが地球外生命体であったと言う説があるが、しかしそう言うには、あまりにチンパンジーとヒトのゲノムは似すぎている。ことほど左様に核ゲノム構造は地球上のすべての生命体で比較しても、地球とはまったく違う世界の生命体であるを証明するには、あまりにも大差がないことがわかったのだ。

つまり人類はあきらかに地球の生物であり、クラゲや昆虫と同じ「地球上の生物」であることはもう否定できない。そうした着想だけの意見には、人間をあらゆる地球上の生物から隔絶した特別な存在にしたいという身勝手で非科学的で主観的に過ぎる偏見でしかない。そのような発想はまずもって人類の中でさえ、人種差別してもよいという狂った民族至上主義的考え方を生み出す元であることが多く、正統な分析に対しての弊害や混乱、遠回りをまねくだけである。いい加減にそこに気付くべきしろものだろう。残念ながらデニケンはすでに過去の空想小説家でしかない。)


今から50年前、ジェイムズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの分子構造を解明し、それによってスタートを切った科学的探究の到達点として2001年にヒトゲノム全体の塩基配列が決定された。そのときから、ヒトの最も近縁な動物はチンパンジー、ゴリラ、ボノボ、そしてオランウータンであることも決定的となった。それらの近似する情報の源泉はすべてヒトゲノムの塩基配列の中にある。それはたんぱく質のコードの集合体である。ところがヒトゲノム全体の中で遺伝子が占めるのはわずか1.5%ほどに過ぎず、つまりヒトの巨大なゲノムの中で、われわれの身体を動かせる構造的および機能的に重要な役割を担っているたんぱく質をコードしているのはごく一部でしかないのだ(ハリス)。

わずか25年前には、ほとんどの(形質)人類学者は、進化上ヒトが類人猿から分かれたのはかなる大昔のことだと考えられていた。1500万年前、顎が丈夫で臼歯が大きかったラマピテクス(絶滅した)の時代だというのが常識だった。しかし現在遺伝子解析は、この分岐がもっとずっと最近のこと(約600万年以降)だったことがわかっている。ダーウィンの「サバンナ仮説」以来、ヒトはチンパンジーとの共通祖先から分岐した、その祖先とはアウストラロピテクス・アフリカヌスだとレイモンド・ダートが考えた(1924年)。その時代まだ、「人間とサルの中間のような生物が人類の祖先と主張されたことが創造論に大きな衝撃を与え、発見者のダートのもとには「お前は地獄の業火で焼かれる」「お前はそのおぞましい化物を自分の子として生む」といった脅迫が数多く寄せられた。」という。それからすでに90年が過ぎたが、おそらく今だに、そうした旧態然な考えを持つ科学否定論者はいるだろう。なんと迷信や過去の定説、宗教家たちの脳みそは変えがたいのだろう。まるで進化を拒否するネアンデルタール人のようである。

類人猿は灼熱の偏西風による乾燥化が進む東アフリカで二足歩行を開始し、森から出た。ヒトはそこから分岐するという漠然たる解答が得られた。しかし、現在、これをさらに発展させ、ではその分岐は短期間のすっきりとした遠隔による類人猿とヒトとの「離婚」だったのか、あるいは双方はいつまでもだらだらと同棲生活をしてつかずはなれずで生殖行為を続けた「ただれた別れ」だったかを分析しはじめている。(おそらく筆者は後者だろうと思う。なぜなら毛じらみのヒトと類人猿の近似という事実があるからだ。これはネアンデルタールとの別れもただれた別れだったことからもありうる。)

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ネアンデルタールと同時代を生きたアジアのデニソワ人の核ゲノム配列が決定されたことで、現生人類(私たち新人のこと)はこれらの旧人類双方と交雑してきたことはもうあきらかになっている。われわれアジア人の一部は、このデニソワ人との交雑の結果誕生した原アジア人の子孫であろう。

このように現代のあらゆる生物の中で、ヒトに最も遺伝子が近い生物はチンパンジー・ボノボであることは否定できない状況となった。この二種類のヒト科生物の共通祖先はすでにアウストラロピテクスのような大型のヒト祖先ではないかというのは間違いはないと考えられ始めている。このままチンパンジーの肉食が進めば、あるいはヒトのような生物になる可能性すら出てくるかもしれない。もちろんそれにははるかな時間を必要とするだろうが、いずれチンパンジーの何世代ものあとの子孫から、現生人類のような、アフリカを出る「新人類」が生まれてくる可能性がないとは言えないのである。

参考文献 ユージン・E・ハリス著、水谷淳訳『ゲノム革命 ―ヒト起源の真実―』2016年 早川書房
ジョナサン・マークス著、長野敬・赤松眞紀訳『98%チンパンジー 分子人類学から見た現代遺伝子学』2004年 青土社