ヒト科人類にだけ共通する、行動を制御する遺伝子がゲノム分析であきらかにされた。
名前はFosBという。人間の本能的な行動をたったひとつの遺伝子が決めていたのだ。

遺伝子はたんぱく質を指定するだけのためにあるので、これまで、動物の行動制御・抑制や反対に活発化にはさしたる関与はしないと考えられてきたが、近年それが見つかったのだ。動物の行動本能を突き動かす遺伝子はいくつも見つかっているが、それを制御している遺伝子ははじめての発見で、話題になった。

ある母マウスの偶然の遺伝子突然変異がおきて、なぜか子供の授乳をうけつけなくなった固体があった。これは、もし人間で同じような変異が起こった場合、ネグレクトとか幼児虐待が起こるのと同じ遺伝子変異であった。それで科学者たちは熱心にその遺伝子を分離させた。

それがFosB遺伝子である。


ヒトや類人猿の基本的行動は、父性集団に母になるメスが外部から入り込むことを基本としている。そのためにサル類のメスの多くは、思春期あるいは繁殖期のオス集団に受け入れられるように体を変え(尻を大きくしたり、赤くしたり、乳房を大きく誇張してみたりすることで共通する)。こうしたメスの行動も、オスの性的欲求も、この遺伝子があることによって適度に抑制されるし、オスが攻撃的になるのもこれが制御している。

母性愛もこの遺伝子があればこそ発現するのだ。だからもしこの遺伝子が正常でなくなれば、子育て放棄や虐待に直結してしまうのである。近年急激に増えている逆t来事件や殺人事件、戦争、暴力事件などなどをこれが抑えてきたはずだが、昨今、なんらkの原因でなぜか機能が低下している可能性も考えうる。その原因が何かは、今後追究されねばなるまい。世の中からあらそいごとをなくすことができるかもしれないからだ。だから人類史を変えうる重大な新発見だというわけである。

人類の戦争や対立やの攻撃性を押さえ込むには、まずこのFosB遺伝子が正常に機能できていることが必要だ。


ところがこの遺伝子が正常なら、繁殖期や危険にさしせまったときの積極性にも影響するから、この遺伝子だけでは抑えきれないことも起こる。

男性と女性では攻撃性は圧倒的に男性ホルモンに多い。
女性にもあるが、非常に少ない。逆に女性ホルモンは、攻撃性をやわらめる効果を持つ。男性ホルモンはアンドロジェン、女性ホルモンはオキシトシンと呼ばれている。

アンドロジェンは男子の睾丸で生成され、男らしいからだと変声期の喉仏の肥大、体毛を毛深くするなどの効果がある。オキシトシンはすべてのヒトが幼児期には存在し、やがて男性だけが思春期になると分泌されにくくなる。だから中学生くらいになると男女の違いがはっきりしてくる。それが実は思春期なのである。


アンドロジェンが爆発的に増加するのと、精子がはじめて生成放出される時期はほぼ同じである。声変わりして、突然背が高くなり、体毛が生え始める。女子は男子より少し早く、小学生高学年くらいに、反対に丸く脂肪がつきはじめ、全体が柔らかく、ふっくらして、乳房が肥大し、にわかに初潮が始まって「女らしく」変身しはじめる。個人差はあるがだいたい同時期にそうなるのはホルモンがそのように本能で時間帯を決められているからだが、男女間で時間差があるために中学に入ったころは、女子のほうが背も高く、大人びている。男子はまだ声変わりしていない子供のままの個体が多いわけだ。三年生になる頃には男子が急激に大人になり、背も高くなって、声が太くなり、最終的に反抗的になる。


まさに反抗期もアンドロジェンの攻撃性が発動して起こる。ゆえに男子の反抗期は小学四年生前後、中学3年生、17歳頃に起こり、さらに25歳、30代でも起こる個体もある。実はこういうときが一番危ない。アンドロジェンとFosB遺伝子の相乗効果で、虐待、殺人、戦争、暴走、喧嘩、車の暴力行為などが起こってしまうこともある。


要するに攻撃性はだいたいそのヒトの決まった時期に誰でも起こる可能性があるらしい。


だからアンドロジェンの分泌を適時適応して押さえ込めば危険性は格段にさがるわけである。いつも押さえ込んだら、積極性はなくなり、また結婚や子供を作る興味もなくなって種が絶滅する。どうも現代の男たちは、環境によって男性ホルモンが抑制されすぎたか?それにしては暴力事件は増える一方で、アンドロジェンをそのように抑制制御する化学物質が先進国のpm2.5や1.5に含まれるのでは?大気の分析も同時に必要だろう。アンドロジェンの行動をもっと細分化調査するべきか?人間の攻撃性には強く働き、積極性には弱く働くとはまだよくわかっていないはずだ。



アンドロジェンは男児の胎児期に一度大量放出される。これをアンドロジェン・シャワーといい、女児では起こらない。これによって男児である成長がはじまるのだ。


その後、アンドロジェンはまったくなくなる。そして少年期後期に再び放出されるように組み込まれている。これが男子の思春期である。男らしい体に変化する。このように昆虫なら見える変態形態を、動物は見せずに何度か脱皮するわけである。

老人になってもアンドロジェンが発動されてしまう個体もある。若々しく、元気なヒトほど危険性がある。老いても尚元気で、若々しいことと、攻撃性の残存は同居するのだ。殺人事件を老人がひきおこす、ご近所とのトラブルを起こす、などもアンドロジェンの影響が大きい。よく言えばそれはいつまでも男らしく、若いということでもあるが、悪く言うと「あぶない奴」でもありえるのである。


女子のオキシトシンには、周囲をなごませて、やんわり、ふんわり包み込む作用もあるとされ、男性ばかりの集団や会社に、たったひとり女子社員が入っただけで、緊張感がゆるむ事例が報告されている。


逆に考えると、例えばある老人が、妻に先立たれ、しばらくするとアンドロジェン・フェロモンによって攻撃的、あるいは引きこもり、閉鎖性が顕著になったりは当然起こるのである。ところが後添えをもらったらあまり怒らなくなるのはよくあることだろう。女性ホルモン、女性フェロモンの、それが効果だ。


ならば・・・
戦争したがるヒト。喧嘩ばかりするわが子。男らしすぎて頭髪がさみしい、しかし体毛だけは無駄に毛深いヒト、やたら精力がありすぎる野郎・・・どもには、オキシトシンを大量に浴びせてやればいいのである。あるいは投与する。するとあらそいごとは収まるはずである。

道理で、やたらに色気のある嫁さんを持っているおっさんの家には争いが少ない?
戦争する兵隊にはオキシトシンたっぷりの女性を近づけろ?慰安婦ってそういう効果が期待された?そんなはずないか。一時的に女性とまじわったところで効能は少ない。薬の投与しかあるまい。

暴力団や暴走族やヤンキーには、オキシトシンを飲ませて、常習化するのが手っ取り早いのかも知れない。暴対法ではただの抑止力にしかなるまい。もともと体内のホルモンバランスが壊れてしまった人たちなのだから、薬剤投与。つまり病気の一種だと考えたらいい。

以前書いた常習性ホルモンと女性ホルモンをうまく与えてやれば、平和を好み、それが永続できる男子を作り出すことも可能だろう。世界の右や左や宗派の過激な国家には、絶大の効果がありそうな気がするが、科学者先生、いかがでしょう?ノーベル平和賞と化学賞と両方もらえたりして?



参考 若原正巳『ヒトはなぜ争うのか 進化と遺伝子から考える』2016

※あくまでも参考文献から着想した記事です。ご自分でホルモンの効能や遺伝子についてちゃんと調べてください。筆者の解釈は間違うこともあります。